HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 19831 Content-Type: text/html ETag: "868ba1-480c-eb53c6c0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Fri, 06 Jan 2012 03:22:14 GMT Date: Fri, 06 Jan 2012 03:22:09 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2012年1月6日(金)付

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 好き合った人の手紙や写真を裏庭で燃やす。古い映画などにある「絶縁の儀式」は、新たな出発を示す場面でもある。恋文も庭も希少の昨今、メールやデジカメ画像を消しても絵になるまい▼警察に出頭したオウム真理教元幹部、平田信(まこと)容疑者(46)は、教祖との写真を5年前に捨てたという。法廷での情けない態度に気持ちが離れ、捨ててすっきりしたと弁護士に語っている▼容疑者は17年前の拉致事件で、運転手を務めたとされる。拉致計画は知らず、「そこまでするか」と教団への不信が芽生えたそうだ。逃亡の果ての再出発、不自由と引き換えに得ようとしたものは何か。自己弁護の山から、カルト集団の真実を探し出す作業が待つ▼特別手配され、ポスターや等身大パネルで知られた顔と長身である。その男が大みそかの深夜、皇居お堀端にそびえる警視庁に赴く。サスペンス風だが、その先はコントになる▼警備の機動隊員は冗談と思い、近くの丸の内署を紹介した。署員も半信半疑で、本人に「ほら、背も高いでしょ」と言わせている。警察は猛省だ。オウム裁判がすべて終わったからといって、胸中の手配写真を燃やしてはいけない▼警官を「説得」してまで名乗り出た容疑者である。決別してこそ話せる過去も、その覚悟もあろう。それをどれだけ引き出せるかに捜査当局の名誉回復がかかるが、真実は「出頭」してくれない。サーチライトでも照らせない。短いロウソク一本で心の暗闇に分け入り、迎えに行くだけだ。

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