HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 31173 Content-Type: text/html ETag: "c10535-5f28-eb53c6c0" Cache-Control: max-age=1 Expires: Fri, 06 Jan 2012 03:21:02 GMT Date: Fri, 06 Jan 2012 03:21:01 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2012年1月6日(金)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

食品の放射能―安全・安心につなげよ

食品に含まれる放射性物質について、福島第一原発の事故以来使われてきた暫定基準にかわり、4月からようやく新しい基準が適用される。厚生労働省の審議会に昨年末に報告された基準[記事全文]

里親制度―なり手を掘り起こそう

東日本大震災で親を失った子どもとその養育家庭を支援しようと、仙台市に「東北・SOS子どもの村情報センター」ができた。設立したのはNPO法人「子どもの村福岡」。親と暮らせ[記事全文]

食品の放射能―安全・安心につなげよ

 食品に含まれる放射性物質について、福島第一原発の事故以来使われてきた暫定基準にかわり、4月からようやく新しい基準が適用される。

 厚生労働省の審議会に昨年末に報告された基準案は、世界的に見ても厳しい。

 大切なのは、これを国民の安心につなげることだ。基準値が意味することを、科学的な根拠とともに十分に説明し、国民の納得を得ることが欠かせない。

 新基準は、原発事故で放出されて食品に含まれる放射性セシウムの許容被曝(ひばく)線量が、暫定基準の年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに強化されたのに対応するものだ。年齢別の摂取量など最も厳しい想定で設定された。

 野菜や穀類、肉、魚などの一般食品は1キロ当たり100ベクレルと暫定基準(500ベクレル)の5分の1になる。新たに乳児用食品に50ベクレルの基準が設けられたほか、飲料水はすべての人が毎日飲むことから、暫定基準の200ベクレルから10ベクレルに強化された。

 この規制によって、食べ物からの被曝はどうなるのか。

 厚労省は実際に流通している食品を購入して、平均的な食事をした場合にセシウムで被曝する1年間の線量を計算した。

 その結果、福島県で0.019ミリシーベルト、東京都で0.003ミリシーベルトと、新しい許容被曝線量の1ミリシーベルトをすでに大きく下回っていた。基準が厳しくなることで、今後さらに下がりそうだ。

 ちなみに、多くの食品にもともと含まれている放射性カリウムによるものは、福島、東京ともに約0.2ミリシーベルトだった。こちらは日本での年間平均1.5ミリシーベルトの自然放射線に含まれ、ふだんから浴びているものだ。

 こうした調査を重ね、規制のあり方の再検討に役立てたり、消費者の判断材料として提供したりすることが大切だ。

 新基準の実施に当たっては、課題もある。まず、基準値を超える食品が出回らないようにするための検査態勢の整備が欠かせない。とくに、飲料水は精度の高い測定が必要になる。

 コメや牛肉などは対応に時間がかかるとして数カ月の経過措置を設けるというが、消費者を戸惑わせ、基準そのものへの信頼性を失わせかねない。

 規制の強化は、生産現場への影響も大きい。農林水産省は新基準を受けて、コメの作付けについて新たな禁止策をとる。魚介類では、海底にいるヒラメなど新基準値を超えるものが続出しており、監視が必要だ。

検索フォーム

里親制度―なり手を掘り起こそう

 東日本大震災で親を失った子どもとその養育家庭を支援しようと、仙台市に「東北・SOS子どもの村情報センター」ができた。

 設立したのはNPO法人「子どもの村福岡」。親と暮らせない事情がある子と里親のために一昨年春、住宅を5戸そろえた「村」を福岡市に開いた。専門家の支援を受けつつ、里親が家庭的環境で養育する全国初の取り組みだ。

 仙台市のセンターも、宮城県内に同じような「子どもの村東北」(仮称)を14年6月に開く計画だ。長期的な支援の輪を広げ、子どもや養育家庭を支える仕組みにしたい。

 振り返ると、第2次大戦後、戦災孤児が世界中で社会問題になった。欧米では、オーストリアで49年、国際NGO「SOS子どもの村」が設立されたのを機に、里親家庭に託される流れが広がった。

 一方、日本では児童養護施設での養育が主流になった。しかも、施設は定員40人以上の大規模型が7割を占める。

 子どもは家庭的な環境で育てるという国際社会の潮流から立ち遅れ、日本は国連子どもの権利委員会から3回も厳しい勧告を受けている。

 養育環境が子どもの成長に及ぼす影響は大きい。厚生労働省も昨年春、養護が必要な場合は「原則、里親」とするガイドラインを作った。政府が施設中心から家庭的養護へとかじを切ったのは画期的だ。10年後の里親委託率をいまの10%から30%に増やすことをめざす。

 福岡市でも、04年度の里親委託率は6.9%と低かった。だが、05年に市が「子どもNPOセンター福岡」に里親普及事業を委託したのを機に昨年3月には24.8%と飛躍的に伸びた。

 市民に里親制度に関心を持ってもらおうと、「新しい絆」フォーラムが毎年2回開かれた。出前講座など多彩なメニューが生まれ、参加者が2年ほどかけて里親登録する流れができた。この歩みの中から世界133カ国目の「子どもの村福岡」も誕生した。

 「行政の仕事だと思っていたことが市民の課題になった。それが最も大きかった」と子どもの村福岡の大谷順子専務理事。意識の変化が、里親のなり手を掘り起こしたといえる。

 親の病気や虐待で、家庭で暮らせない子は全国に約4万7千人。登録里親は10年3月で7180人、里子は4055人だ。

 市民や関係機関と上手に連携した福岡市の取り組みを全国に広げていきたい。

検索フォーム

PR情報