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野田首相がきのう、年頭の記者会見にのぞみ、今年の政権運営の優先順位を明確にした。昨年に続き、震災からの復旧・復興、原発事故への対応、日本経済の再生に重点的にあたるという[記事全文]
一連の刑事裁判が終結し、オウム真理教事件は、暦とともに少しずつ、苦い歴史になってゆくのかと思われた。大みそかの夜、公証役場事務長の拉致・致死事件で特別手配されていた平田[記事全文]
野田首相がきのう、年頭の記者会見にのぞみ、今年の政権運営の優先順位を明確にした。
昨年に続き、震災からの復旧・復興、原発事故への対応、日本経済の再生に重点的にあたるという。そのうえで「最大のハードル」は、消費増税と社会保障の一体改革だと言い切った。
将来世代になるべく負担を先送りしたくないと、あえて不人気政策に取り組む姿勢は、私たちも率直に評価する。
民主党は昨年末、すったもんだの末、消費税率を2段階に分けて10%まで引き上げる方針をまとめた。首相は週内に素案を正式に決め、来週中に与野党協議を呼びかける考えを示した。
野党、とりわけ2大政党の一角として責任を負う自民党は、話し合いに応じるべきだ。
任期中の消費増税を否定して政権に就いた民主党に増税を提唱する資格はない。谷垣総裁はそう言って突っぱねたが、ここはよくよく考えてもらいたい。
確かに、社会保障費の膨張に歯止めをかける仕組みは不十分で、積み残された課題は多い。
民主党内にはなお、強い反対論があり、増税法案の国会提出や採決の際に、さらなる離党や造反も取りざたされている。
問責決議を受けた2閣僚を続投させている野田政権は相手にできないという理屈もあろう。
それでも消費税10%はそもそも、自民党が一昨年の参院選で掲げた公約だ。政策目標はほとんど一緒なのに、議論のテーブルにさえつかないのでは、責任野党の名が泣く。
政権を解散総選挙に追い込むための党利党略を優先していると言わざるを得ない。
「マニフェスト違反」は重くても、それには次の総選挙で、有権者の審判が下される。
欧州発の経済危機を見ても、財政の健全化がいま、喫緊の課題であることは明らかだ。世界の市場が日本の政治の「決定力」を注視している。
一体改革だけではない。総選挙での一票の格差是正や定数削減、公務員給与の削減、郵政改革……。先の国会で積み残された重要課題はいずれも、与野党の合意なくして実現できない。
今年は9月に民主、自民両党の党首選が控えている。政治的な駆け引きが一層過熱することは間違いない。
しかし与野党は、繰り返される政治の機能不全に、国民がほとほとあきれている現実と真剣に向き合う必要がある。
この重要な1年に、どの政治家がどのように振る舞ったか、私たちも目をこらして、次の審判に備えよう。
一連の刑事裁判が終結し、オウム真理教事件は、暦とともに少しずつ、苦い歴史になってゆくのかと思われた。
大みそかの夜、公証役場事務長の拉致・致死事件で特別手配されていた平田信(まこと)容疑者(46)が警視庁に出頭、逮捕された。
いや、事件は終わっていないんだと、私たちは不意打ちで突きつけられたかのようだ。
逃亡生活17年。
なぜ、いま、現れたのか。
平田容疑者は、1995年3月の警察庁長官銃撃事件でも一時、捜査線上に浮かんでいた。弁護士には「長官事件が時効となり、間違った逮捕はなくなったので早く出てきたかった」と話したという。だが時効の成立は、一昨年春のことだ。
教団元代表の松本智津夫死刑囚らの刑執行を、遅らせるための出頭ではないか、との見方もある。が、平田容疑者は「死刑執行は当然。オウムは信仰していない」と否定した。
ならば、どうして逃亡中のことに口を閉ざすのか。教団関係者との接触や支援はなかったのか。公安当局はオウムの派生団体が今も千人超の信徒を擁し、松本死刑囚の刑執行に関心を寄せている、とみる。
公証役場事務長はなぜ死に至ったのか、遺族は真相の解明に期待を寄せる。長官銃撃事件については、本当に何も知らないのだろうか。地下鉄サリン事件で特別手配されているほかの2容疑者とは、足取りは交わらなかったのか。
多くの「?」を解く作業が今後の捜査に委ねられる。闇を少しでも、こじあけてほしい。
改めて、オウム事件とは何だったか。豊かな時代に高学歴の若者たちが、あれだけの暴走をした理由について、私たちは答えを探しあぐねている。
平田容疑者は、東日本大震災の不条理を見聞きしたことが、出頭のきっかけになったとも語った。マインドコントロールが本当に解けたのだとしたら、この17年、社会の変転を感じつつどう省みてきたのか。そのことも聞いてみたい。
警察は、出頭を見逃しかねない失態を犯した。
容疑者が最初に名乗り出た警視庁の本庁舎では、機動隊員が取り合わなかったという。一人ひとりの緊張感や、この間の情報収集態勢に、問題ありと言わざるをえない。縦割りで連携がまずい巨大組織の弊が、またも出たのだろうか。
最近は、特別手配者の写真を見ても名が浮かばない新人警官が増えているという。風化の兆しは、ここにまで及んでいる。