<見返りを求めて政治献金をしたら贈賄になる。見返りを求めなければ会社への背任である>。以前にも紹介したことがある財界のご意見番、故諸井虔さんの名言である。献金をする側の微妙な心理をうまく言い表している▼献金が「寄付金」と名目が変わっても、企業などが特定の人物や団体にまとまった資金を提供する行為は、どんな理由を並べても、見返りを求める賄賂的な“におい”がぬぐえない▼内閣府原子力安全委員会の班目春樹委員長が東大教授だった二〇〇九年までの四年間に、三菱重工業から計四百万円、代谷誠治委員は京大教授だった〇九年までの三年間に、電力会社などでつくる日本原子力産業協会の支部から計三百十万円の寄付をそれぞれ受けていたことが分かった▼審査の中立性には「影響はない」とお二人とも釈明しているが、国や電力会社を指導する権限を持つ安全委の中立性を疑われること自体、すでに委員として失格であることが、なぜお分かりにならないのだろうか▼多額の寄付金を通じ企業と大学がなれ合う「原子力ムラ」の実態をあらためて思い知らされる。班目委員長は「議事録なども全て公開し、納得できるかは国民の判断に委ねたい」と話した▼さて、彼らの説明に納得する人はどれほどいるだろうか。多くの良識ある国民の判断は「即刻、辞任してくれ」ではなかろうか。