HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 48981 Content-Type: text/html ETag: "ad638-12f0-4b58e01da3083" Expires: Mon, 02 Jan 2012 22:21:43 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 02 Jan 2012 22:21:43 GMT Connection: close 1月3日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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1月3日付 編集手帳

 今は亡き名女優の杉村春子さんは“走る”演技をするとき、役柄の年齢で走り方を演じ分けたという。ある対談で語っていた。「いちばん若い頃はアゴで走るんです。年齢がいくにつれて、胸から走る、膝から走る、腰から走る…」◆箱根駅伝の選手は10代から20代にかけての青年である。胸から、の年齢だろう。きのうの往路、どの選手もタスキ掛けの胸を冷たい風に張って走っていた◆スポーツ用語「駅伝」の名付け親は、歌人の土岐(とき)善麿(ぜんまろ)といわれる。初の駅伝「東海道駅伝徒歩競走」(1917年)を主催した読売新聞の社会部長だった◆その人に印象深い一首がある。〈いっぽんの(くい)にしるせる友が名の、それも消ゆるか潮風の中に〉。いま聞く耳には、震災の犠牲者を(しの)ぶ歌のようにも響く。つらい山坂のあること、ひとりの力ではゴールにたどり着けないこと…人生というものが二重写しになってテレビ画面にちらつく今年の箱根駅伝である◆のぼりの勾配はきつそうだが、とにもかくにも今年という年を走り出さねばなるまい。ときに上半身が置いてけぼりにされる、不肖「腰から」組の身なれども。

2012年1月3日01時23分  読売新聞)

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