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天声人語

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2011年12月30日(金)付

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 「災害に明け暮れた心の重い年でした」。78歳を迎えた天皇陛下のご感想だ。つらい記憶を分かち合い、前に進みたい。忘れがたき年を納める12月の言葉から▼被災地に通う医師で作家の鎌田實(みのる)さん(63)が言う。「長期戦に入り、みんな疲れている……人生はマラソン。がんばらない時間を作り、エネルギーを蓄えた人が勝つんです」▼病を抱えて、原発事故で避難生活を強いられた元中学教員三本杉(さんぼんすぎ)祐輝(ゆうき)さん(53)。「がんを宣告され、残された回数券をどう使って生きていくか考えた。放射能もはっきりしてくれ。進む覚悟が決まればがんばれる」と講演で▼「何でも絆でくくると、収まりのいい物語になってしまう」と、作家あさのあつこさん(57)。大震災から日本論へ。脚本家の倉本聰さん(76)は、小国でも尊敬される国をと願う。「日本というスーパーカーに付け忘れた装置が二つある。ブレーキとバックギアです」▼映画で山本五十六(いそろく)を演じた役所広司さん(55)が語る。「陸軍でも海軍でも、戦争体験のない若手に強硬派が多かった。今こそ、昭和史と向き合う必要のある時代じゃないでしょうか」▼サントリー学芸賞の小川さやかさん(33)は、タンザニアでの行商体験を本にした。「マチンガ(行商人)には、ウジャンジャ(手練手管)で窮地を切り抜けてしまう生命力がある。私たちは将来が不安だからと現在を我慢してしまうけど、今を大切に生きることを見直してもいい」▼日々の「回数券」。惜しみながら使いたい。