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いつぞやの川柳欄に〈宝くじたの字が消える大晦日(おおみそか)〉とあった。鳴り物入りの年末ジャンボも、抽選後は大半が「空くじ」となる。運なき多数が支える現実には目をつむり、もう何日か夢を温めたい▼年の瀬には景気のいい話が似合う。スペインのクリスマス宝くじで、1等(約4千万円)1800本を人口2千人の町が独り占めしたという。同じ番号が大量に出回る方式で、町のくじ屋が仕入れた「58268」の束がお宝に化けた▼スペインは22%の失業率とユーロ危機にあえぎ、北東部のその町も沈んでいた。捨てる神あれば拾う神あり。世界一ともいわれる賞金総額の3割弱、約730億円が転がり込んだ町は、飲めや歌えの大騒ぎである▼くじを買わなかった人の居心地が気になるが、にわか景気のお裾分けはあまねく及ぶ。居酒屋、車販売店、旅行業者などは大入りに違いない。皆が財布の紐(ひも)を緩めれば、経済は回り始め、皆が少し幸せになる。古今東西の道理である▼景気が心配な大統領や首相は、当たりくじを配る代わりに、手を尽くして人々の懐を温めてはどうか。まさかとは思うが、国会議員がわが身も切らぬまま国民に負担増を求めるなど、愚の骨頂だろう▼〈宝くじ買える程度の暮らしぶり〉。まじめに生きていればいつかは報われる、幸運に巡り合う。そう思ってもらうのも、政治の役割である。「有馬記念」で外し、ジャンボに一発逆転を託す向きもあろう。「たの字」が消えてなお、笑える世でありたい。