古くから伝わる料理に「泥鰌(どじょう)豆腐(どうふ)」なるものがあるそうだ。いずれ、夏の味覚なのではあろうが、生きたままのドジョウと豆腐を鍋に入れて煮るというのだから少々荒っぽい▼沸きだすお湯の熱さにたまらず、ドジョウは次々に、まだ冷たい豆腐の中に潜り込むが、結局は、豆腐ごと煮えてしまうという仕掛け。実際やってみると、そうはならないらしいが、またの名を「泥鰌地獄」というのもむべなるかな、だ▼無論、ドジョウと言えば、野田首相。実は、首相就任時、ドジョウにまつわるネタを探していて、ネットでたまたまみつけたのが日本豆腐協会のホームページ。この料理の話も、そこからの受け売りである▼それにしても、最近の首相、この料理のドジョウに重なってならぬ。例えば、来年度予算の政府案。野田さんは、確か、前首相の掲げた「脱原発依存」の方針を継ぐと言ったはずだが、そういう内容になっていない▼もちろん原発推進派、いわゆる「原発ムラ」の抵抗も大きかろうが、この問題に限らず、首相には摩擦を恐れず何かを押し通すという姿勢がほとんど見えない。「融和」が身上ゆえか、とにかくホットな課題となると、アチチとばかり豆腐に逃げ込んでしまうような印象だ▼自分が煮上がるのは勝手。だが、頼りないドジョウ宰相のせいで、国民が苦労する“ドジョウ地獄”は願い下げだ。