クリスマスが終わると、子どもたちの楽しみはお正月。あの親戚はいくら、こっちのおばさんはこれぐらいかな…。お年玉の皮算用もひそかな楽しみだ▼ところが、懐具合の厳しいおじさんは突然、急用ができて顔を見せなかったり予想より少なかったりすることもある。期待した額に届かずにがっかり。かつて、そんな経験をした人も少なくないだろう▼おととい公表された二〇一二年度の予算案は、苦しい国の財政事情を鮮明にしたが、野田佳彦首相や財務官僚が、もらえるかどうか分からないお年玉を当てにする子どもに重なってしまった▼基礎年金の国庫負担率を50%に維持するための財源二兆六千億円を、消費増税が実現した時に償還する「年金交付国債」で賄うという。現金化するまで一般会計に計上する必要はないというのだから、借金の「飛ばし」と同じだ▼首相が政治生命を懸ける消費増税は与党でさえ反対が多い。いつ実現するか不透明なのに、増税を前提にして組み入れる。こんな粉飾まがいの予算が許されるのか▼財政危機は国民の共通認識になっている。将来の負担増も頭から反対という人ばかりではないと思う。政府や国会議員に、身を切る覚悟をまるで感じられないから賛成する気にならないのだ。お年玉をもらう子どもたちが未来を支える世代だ。隠れ借金まで膨らましては顔向けできない。