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日本にも、たまにだが「政治主導」が出現する。例えば日中の国交正常化は、田中角栄内閣ができて3カ月足らずで実現した。中国を承認する国は増え続けていたが、自民党内には反発する親台派がいた。大平正芳外相と北京に飛んだ田中は、「私と大平の政治力が試される」と腹を括(くく)る▼先ごろ公開された外交文書によると、田中は「迎賓館ができたら最初にお迎えしたい」と周恩来を誘いもした。政治が方向を決め、そこへの道筋を官僚が整える。本来の姿だろう▼これと比べては酷ながら、野田首相の訪中、どれほどの成果があったのか。この時期、中国首脳と北朝鮮を語る意味はあろうが、首相の言動は霞が関の台本に忠実すぎる嫌いがある▼経済的にも軍事的にも、中国の重みは40年前の比ではない。自信過剰の振る舞いに、アジアの海は荒れ放題。日中の懸案の多くも、ガス田からパンダの貸し借りまで、先方に主導権があるかに見える▼不利な形勢でまみえるには、倍旧の外交力が要る。ところが、日本には田中も大平もいない。二回り小粒で、のべつ交代している首相と外相がいるだけだ。政治を見限った官僚たちの中には、妙に活気づく者もいる▼大衆人気を誇った田中首相も、狂乱物価と金脈批判で退陣に追い込まれた。そしてロッキード事件。それでも2年前の本紙調査では、戦後首相の一番人気である。前に進まない政治は「小粒」だけの責任ではないのだが、強烈なリーダーシップへの郷愁は理屈抜きらしい。