HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 31846 Content-Type: text/html ETag: "821b6f-5f1c-bc2a9a00" Cache-Control: max-age=2 Expires: Sun, 25 Dec 2011 22:21:03 GMT Date: Sun, 25 Dec 2011 22:21:01 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
東日本大震災から9カ月半。まちづくりの専門家が入れ替わり視察に訪れる仮設団地が、岩手県釜石市にある。街はずれの公園にできた平田(へいた)第6仮設住宅(278戸)。スーパ[記事全文]
漂流10年に及ぶ世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉、ドーハ・ラウンドの早期妥結が断念された。中国市場の開放をめぐる米国と中国の対立が根深いうえ、来年は主要国の選挙や[記事全文]
東日本大震災から9カ月半。まちづくりの専門家が入れ替わり視察に訪れる仮設団地が、岩手県釜石市にある。
街はずれの公園にできた平田(へいた)第6仮設住宅(278戸)。スーパーや美容院が入るプレハブ商店街も、23日に完成した。小さな「仮設の街」になる。
団地の中心はサポートセンターと呼ばれる施設。大手介護事業者が運営を任され、お年寄りへのデイサービス提供のほか、買い物の手伝いや、戸別の見回りを引き受ける。看護師や介護福祉士ら職員の多くが、地元の被災者でもある。
体が弱った人が住む一画は、玄関が向かい合わせに配され、高低差のない木製デッキで結ばれる。陽気のいい日は、あいさつや立ち話がゆきかう。仮設住民が働き、ふれあえるカフェをつくる計画もある。
市場があり、人が交わる路地があり、雇用を生み出す試みがある。元のコミュニティーは散り散りになったが、仮設の自治会が先月、発足した。
街をデザインしたのは東大・高齢社会総合研究機構の研究者ら。阪神大震災後には、孤独死が相次いだ。そこで、誰もが孤立せず、役割を持てるような仮設をと、行政に提案した。
東北の被災地を襲うのは加速する人口流出と、超高齢化の波だ。復興が進み、高台に街をつくるにしても、復興住宅を建てるにしても、地域でケアをする態勢が必要になる――。
釜石の仮設が、そのモデルになると、小泉秀樹・准教授(都市工学)は説明する。
仙台市の仮設住宅では、「パーソナルサポート」の仕組みも動き出した。
生活をなかなか立て直せず、仮設に取り残される人がいる。もともと収入が不安定で、母子家庭だったり、引きこもりがちだったりと、何かしら困難を抱えた人たちだ。
そうした人を探し出し、息長く助言しながら、役所の壁を越え、就労支援や福祉・医療の窓口につなぐ。ホームレスを支援してきた団体が集まり、仙台市との事業を立ち上げた。
パーソナルサポートは、内閣府参与の湯浅誠さんが震災前から唱えていた、伴走型の貧困者支援の形でもある。
急激な高齢化、安全網からこぼれる困窮者、地域社会が弱る中でのコミュニティー維持。被災地が直面する課題は、実はぎゅっと凝縮した形で、日本社会の未来を先取りしている。
厳冬を迎えた仮設住宅で、復興につなぐ知恵を絞る。そこに多くのヒントがあるはずだ。
漂流10年に及ぶ世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉、ドーハ・ラウンドの早期妥結が断念された。
中国市場の開放をめぐる米国と中国の対立が根深いうえ、来年は主要国の選挙や政権交代に伴う「政治空白」から、進展は絶望的という判断による。
ただ、欧州危機の深まりで世界経済が減速するなか、自由貿易を進めるラウンド交渉の重要性はむしろ高まっている。
WTOは紛争解決など日常業務を通じて求心力を保つ方針だが、交渉の再起動へ戦略的な布石を打つことが必要だ。
世界各国はFTA(自由貿易協定)など個別の枠組み作りに、一段と傾斜しそうだ。
この流れが行き過ぎれば、市場として魅力に乏しいとみられる途上国が取り残されたり、経済のブロック化を招いたりする恐れがある。個々の枠組みを世界経済に資する形にするためにも、ラウンド交渉は不可欠だ。
日本は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意思を表明した。TPPは貿易や投資で米国が望む高水準の自由化を掲げる。逆に、どの国にも拡張できる開放性には乏しい。
日中韓FTAの議論も動き出した。中国がTPPに触発されたのは間違いない。ここでは中国の市場開放が焦点になる。
日本は自らの市場を開放しつつ、それぞれの地域連携を国益に反映させなければならない。
同時に、二つの枠組みの結節点にある日本にとって、TPPにも日中韓FTAにも、世界に広がる普遍性をどう持たせられるか、そこにいかに貢献していくかが重要な課題だ。
それは、ラウンド交渉での米中の妥協点を探ることにもつながる。
戦後の貿易自由化は米国が引っ張ってきたが、リーマン・ショック後の多極化は、その構図が崩れつつあることを意味する。米国流の自由化一辺倒では世界の理解を得られない。
一方、中国はWTO加盟後の10年で驚異的な成長を遂げた。自由貿易の恩恵だけでなく、加盟に向けて断行された構造改革のたまものでもある。貿易や投資の自由化は中国が必要とする産業の高度化や効率化にとっても欠かせない。
国内に広大な後進地域を抱えることで、途上国並みの優遇を確保したいのだろうが、世界2位の経済大国が全くの途上国扱いでは通らない。
米中妥協への触媒の役割を果たせれば、日本にとってもメリットは大きい。これからの数年間が正念場だ。