注目の名古屋「減税の陣」が幕引きとなった。公約の10%ではないが、政治対話で5%減税となった。市レベルで全国初の恒久減税であり、次は行革や経済への効果に目をこらしたい。
臨時議会での河村たかし市長の発言が印象的だった。「歩み寄るべきところは歩み寄るとの観点に立ち、現実に即した対応を取ることも必要との判断に至った」。政治判断による柔軟な軌道修正が議会との対話を可能にし、5%減税を実現に導いた。
減税幅を減らしたことで、最大のネックであった七十六億円の財源不足は、ひとまずは解消できる。減税条例とは別に、予算で「福祉にも全力を尽くす」とも確約している。
市長と議会が鋭く対立してきた理由には、市長選や市議選後の市長の強硬な発言もあった。「税金で食っとる方は極楽」と、議会や役所を一刀両断。市長選で六十六万票と七割近い民意を得ての圧勝が、議会との率直な対話を逆にさまたげてきた。
議会の側にも政策論争での賛否だけでなく、感情的な反発があったように見えた。今回の可決が、仕切り直しになればいい。
限りある予算の中で、福祉や低所得者対策の具体的な考えを早急に示してほしい。減税率5%の経済効果は議会の質疑でも明確にはならなかった。10%なら市のGDPを年平均0・3%押し上げると説明してきた。
経済は生きもので毎日のように変わる。経済状況に応じて見直すべきだし、三年以内の検証も、一年ごとの次年度財政見直しを、約束通りきちんと市民に報告してほしい。
市長の公約は減税のほか、議員報酬半減と地域委員会の全市拡大があり、いずれもまだ道半ばだ。具体的な姿が見えてきた大阪都構想に比べ、中京都構想は掛け声のみにとどまる。
来年は解散風も吹きそうだ。地域政党として「減税日本」の前を走る大阪維新の会は国政進出も視野に入れる。
市長は、国政転身をはっきりとは否定していない。議会で野党は減税を急ぐ市長に「わが身を売り込むためでは」と切り込んだ。市長は「そのような気持ちはサラサラない」と答えた。
減税は河村市政の一里塚である。自治は住民のためにある。任期まで市政に全力をあげるのが責務だろう。
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