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天声人語

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2011年12月25日(日)付

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 戦後まもなく、9歳の男の子が「雪」という短い詩をつくった。〈詩を書いていると/雪が降ってきた/えんぴつの字がこくなった〉。北国だろう。たぶん暖も行き渡らぬ部屋で、窓辺の景色に身を硬くする子が浮かぶ▼週末の列島をこの冬最強の寒波が包み、北海道は吹雪に、日本海側は西まで白に染まった。ゴシック体で書きたい雪である。ホワイトクリスマスには違いないが、降り募る六花(りっか)がいつも団欒(だんらん)やデートの小道具とは限らない▼居座る寒気も、舞う雪も同じながら、地上の風景が違う。被災地には積もるべき屋根がない。沿岸から内陸に逃れ、慣れぬ雪かきにあえぐ人々がいる。雪暗(ゆきぐれ)の空に思うのは変わり果てた古里か、離ればなれの肉親か▼行政のすきま風であろう。急ごしらえの仮住まいには、防寒対策が不十分なところも多い。お年寄りのみの世帯に、昼間だけ黄色い旗を掲げてもらう仮設住宅があるそうだ。旗が出なくても、出たままでも、無言のSOSになる▼震災は弱い立場にある人をさらに傷つけ、初めての冬が傷口を疼(うず)かせる。被災者を含む弱者にピンポイントで暖を届ける時なのに、来年度予算案をめぐる迷走と裏切り、小細工はどうだろう。一段の寒さを覚えてしまう▼むろん、悪いことばかりは続かない。お天気の経験則によれば、聖夜の前後が凍(い)てつくと、元日あたりに寒が緩むらしい。混乱の後は平穏、拙政の果てには賢政が待つと念じたい。こうして字を打ち込む音が、だんだん大きくなる。

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