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2011年12月25日(日)付

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来年度予算―危機感がなさすぎる

会計上の操作を駆使し、財源不足を補う新規国債の発行額は目標の範囲内に抑えた。それでも、4年連続で国債発行額が税収を上回る異常事態――。来年度一般会計の予算案は、ひと言で[記事全文]

武器輸出―三原則を緩和するな

野田政権が、武器の輸出を原則として禁じる「武器輸出三原則」を緩和しようとしている。週明けに、官房長官談話の形で発表する見通しだ。しかし、なぜ、こんな年末のどさくさに紛れ[記事全文]

来年度予算―危機感がなさすぎる

 会計上の操作を駆使し、財源不足を補う新規国債の発行額は目標の範囲内に抑えた。それでも、4年連続で国債発行額が税収を上回る異常事態――。

 来年度一般会計の予算案は、ひと言で表すとそうなる。

 震災復興関連を除く歳出は6年ぶりに前年度より減って90.3兆円。一方の歳入は、税収の42.3兆円に対し、国債発行が44.2兆円だ。「今年度並みの44兆円にとどめる」との約束はかろうじて守られた、と言いたいところだが、実態は違う。

 からくりは基礎年金の国庫負担にある。負担率を36.5%から50%に引き上げるのに必要な2.6兆円の扱いだ。

 過去3年間は特別会計などの「埋蔵金」をあててきたが、限界に達した。財務省がひねり出したのは、年金積立金を管理する独立行政法人に「交付国債」を出すという手法だ。

 交付国債は小切手のようなもので、受け取った独法側が現金に換えるまで政府は支出を免れる。来年度予算を取り繕うための負担の先送りで、これを加えると歳出総額は過去最大だ。

 からくりの二つ目は、先に決まった今年度の第4次補正予算案だ。総額2.5兆円の中に、本来なら来年度の予算案に盛り込むべき項目が散見される。前倒し計上で来年度予算の国債発行を抑える狙いが透ける。

 典型例が70〜74歳の医療費窓口負担の関連だ。政府は来年度から本来の2割負担に戻そうとしたが、民主党の反対で1割負担の維持が決まった。そのために必要な2700億円を、今年度の4次補正に入れた。

 では、せめて歳出の中身はメリハリをきかせられたのか。

 農家への戸別所得補償は、農業の大規模化を促すため、零細な兼業農家にも手厚く支給している仕組みを改めることが急務だ。しかし、ほぼ現行制度のまま予算が計上された。民自公3党の見直し協議が決裂したとはいえ、まずは政府が改革を打ち出すべきではないか。

 公共事業費は震災関連を除くと3%減ったが、整備新幹線の未着工3区間や八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)本体工事の着工、東京外郭環状道路の建設再開など、大型事業へ道を開いた。長期間にわたる財政負担と効果の分析は不十分なままだ。

 国の債務残高は国内総生産の2倍に達し、1千兆円突破は目前だ。欧州の債務危機が深刻化するなか、あまりに危機感が乏しい。こんな予算で国民に消費税の増税を求められるのか。国会で徹底的に議論し、予算を組み替えてもらいたい。

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武器輸出―三原則を緩和するな

 野田政権が、武器の輸出を原則として禁じる「武器輸出三原則」を緩和しようとしている。週明けに、官房長官談話の形で発表する見通しだ。

 しかし、なぜ、こんな年末のどさくさに紛れるように見直しを急ぐのか。不見識であり、容認できない。

 三原則は、専守防衛に徹し、他国への脅威とはならないという、戦後日本の抑制的な防衛政策の主要な柱のひとつである。

 この平和国家のブランド力の意義、重みを、首相らはどう考えているのか。

 もともと、民主党政権は昨年末にも緩和を図っていた。

 だが国会運営で協力してほしい社民党への配慮から、先送りした経緯がある。そのときも、私たちは時間をかけた慎重な対応を求めた。

 あれから一年、国会でどれだけ議論したのか。国民への説明は、いつやったのか。

 いま、緩和論が浮上する理由は承知している。

 武器のハイテク化に伴い、1国だけでは開発、生産を担いきれなくなってきている。複数の国が連携する共同化が、国際的な潮流になりつつあり、日本も同盟国の米国に加えて他の友好国とも幅広く協調したい、ということだろう。

 米国の期待や、国内の防衛産業の強い要請もある。

 だが、日本はこれまでも、三原則を堅持しつつ、必要であれば、一件一件を吟味し、歯止めを講じながら、「例外」を認めてきた。

 米国への武器技術の供与も、北朝鮮のミサイルを迎撃するシステムの米国との共同研究・開発も、そうやってきた。

 今回の緩和は、武器の共同開発・生産などで、一定の基準を満たすものは、一律に例外扱いする方針のようだ。

 要するに、例外を設けやすくする「例外の普遍化」を図ろうというのだ。

 だが、手がけた武器が、なし崩し的に第三国に輸出される可能性がある。

 一律に例外とする方式では、日本として一貫した方針に基づいて、有効な歯止めをかけられなくなる。

 いま、中国やロシア軍の急速な近代化に対抗する形で、アジア・太平洋地域の軍拡が進んでいる。日本の三原則緩和に関係国の疑心を招けば、この流れを助長しかねない。

 日本外交が優先的に取り組むべきは、不断の対話と相互依存の深化を通じて、地域の信頼醸成に努めることだ。拙速に三原則を緩める時ではない。

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