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天声人語

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2011年12月24日(土)付

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 アンデルセンの「絵のない絵本」は、お月様が空から見聞きしたあれこれを夜ごとに話して聞かせる物語。最後の第三十三夜は、女の子が眠る前に「日々のパンを与えたまえ」とお祈りする話だ▼祈りのあと、こそっと言った言葉を、母親が「何て言ったの?」と聞く。〈「お母さん、怒らないでね」と小さな女の子は言いました。「あたし、お祈りしたのよ。パンにバターもたくさんつけてくださいまし、ってね!」〉(矢崎源九郎訳)。かわいく切なく、胸に残るせりふである▼さて、女の子はがっかりだろうか。アンデルセンの祖国デンマークでこの秋、バターの新税が導入された。他にもチーズや肉類、ピザなど、飽和脂肪酸を一定以上に含む食品が対象という。脂肪への課税は世界初と騒がれた▼税収を増やす胸算用もあるが、まずは国民の健康増進が狙いのようだ。飽和脂肪酸をとりすぎると、悪玉コレステロールが増えて病を呼ぶとされる。とはいえ名だたる酪農王国である。反発もあったと思われるが、憂いの方が勝ったらしい▼どこで聞いたか、「大人とは、垂直方向には発育をやめたが、水平方向にはやめていない人」という寸言があった。腹の周りを気にしつつ、日本も週末のクリスマス。ご馳走(ちそう)にスイーツに食欲全開の大人もおられよう▼やぼは申すまい。体重計を放念し、存分に味わうも良しである。ただ一つだけ、パンにバターをたっぷりつけてあげたい子が、地球に多く暮らすことを忘れないようにして。

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