政府・与党は社会保障と税の一体改革のうち、社会保障改革分野の骨子をまとめた。消費増税への抵抗感を減らすため、負担の増加や給付の抑制を極力求めなかった。だが、これこそ知りたい点だ。
専業主婦の年金制度の見直しは見送られた改革のひとつだ。
夫が会社員などの専業主婦は現在、年金の保険料を払わなくても基礎年金を受け取れる。
今回の見直しは、妻は夫と夫婦で保険料を払っているとみなし、さらに厚生年金も半分を受け取れる案だった。妻も個人としてとらえ保険料の負担と年金を受け取る権利をはっきり打ち出した。
だが、保険料の引き上げなどを求めず夫婦の負担と給付はこれまでと変えなかったことで、保険料を払う働く女性や、専業主婦であっても保険料を払う自営業者の妻などから反発が出て見送った。
さまざまな社会保障サービスの給付と保険料などの負担の関係は、個人ごとに明確化する必要性が指摘されている。自分自身の負担と給付のバランスが分かれば、どんな負担なら納得できるか個人でも分かりやすくなるからだ。
制度を簡素に手直しする改革は必要だ。専業主婦の年金改革でも説明を尽くしたとは言い難い。
消費増税を意識して手をつけなかったと思える改革もある。七十〜七十四歳の医療費の窓口負担一割から二割への引き上げだ。法律で二割と決まっているが、一割に据え置いてきた。今回も民主党は高齢者へ配慮して見送った。
医療はじめ保険制度は、加入者が出す保険料で賄うことが基本だ。税を投入する前に保険料でどう賄うか十分な議論が要る。窓口負担も本来の二割負担にすべきだとの考え方もある。
ただ、高齢者は医療に頼る場面も増える。負担が増えることで受診を控え、十分な医療を受けられなくなることは避けたい。
それだけに消費増税を乗り切るために、負担の論議をあいまいにしてごまかし、増税後に突然、負担を増やされたり給付を削られてはたまらない。
見送った改革には、経済情勢に合わせて年金額を見直すルールの導入や、高所得者の厚生年金保険料の引き上げ、外来患者の窓口での定額百円負担などもある。
世代に関係なく能力に応じた負担をしないと制度を支えられない。政府が必要だと考えるなら、納得できる負担増の説明こそ丁寧にしなければ改革は進まない。
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