エジプトにあるピラミッドには、こんな碑文が残っているそうだ。<人は自分が食べる量の四分の一で生きている。残りの四分の三は医者が食べている>。数千年前の支配階級は、食べ過ぎが病気の原因になることを知っていたのだろう▼<腹八分目に医者要らず。腹十二分に医者足らず>という養生訓もある。四分の一は大げさにしても、飽食の時代の生活習慣病を考えると先人の戒めには説得力がある▼国連食糧農業機関(FAO)がまとめた食料供給カロリー(二〇〇七年、一人一日当たり)を見ると、一番高い国は「肥満大国」の米国で三七四八キロカロリー。二八一二キロカロリーの日本は、主要国の中では低い方だった▼一九六〇年代当初は韓国と変わらない時期もあった北朝鮮は八〇年代以降、食料生産の停滞や飢饉(ききん)で〇七年は二〇八七キロカロリーにとどまった。それでも思ったほど悪くはない。報告した数字の水増しや支援物資が隅々まで届いていないことを想像してしまう▼政権を支える富裕層の多い平壌では食料事情はさほど悪くないようだが、地方の疲弊は深刻だ。国連は今年、六百万人が食糧不足に陥っていると発表。また、国民の三人に一人に当たる八百四十万人が、栄養失調状態にあると分析する▼国民が飢えに苦しむ中、特権階級だけが豊かになる。祖父に似てでっぷり太った三代目を見て、民衆は何を思うだろう。