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2011年12月22日(木)付

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一体改革―税制の全体像を描け

社会保障と税の一体改革の素案づくりで、政府・与党の税制論議が正念場を迎えた。先にまとまった社会保障改革案の財源を確保する大切な作業だ。2010年代半ばまでに段階的に消費[記事全文]

国の出先廃止―あきれた国交省の暴走

政府の出先機関改革に、国交省が反旗をひるがえした。閣議決定までした「原則廃止」を踏みにじる案をまとめたのだ。あまりの暴走に驚き、あきれる。野田首相は通常国会に法案を出す[記事全文]

一体改革―税制の全体像を描け

 社会保障と税の一体改革の素案づくりで、政府・与党の税制論議が正念場を迎えた。先にまとまった社会保障改革案の財源を確保する大切な作業だ。

 2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる――まずは政府・与党が6月に決めたこの方針に沿って、いつ、何%ずつ引き上げるか、決めなければならない。

 消費税は社会保障だけにあてる目的税とする。誰もが負担する消費税は、社会全体で支え合う社会保障の財源にふさわしいとの考えに基づく。

 ただ、税率を10%に上げても社会保障が万全になるわけではない。医療や年金、介護、子育てなど社会保障の給付費は108兆円(11年度)。保険料で60兆円近くをまかなうが、10%の消費税で得られる税収は30兆円に及ばない。給付は高齢化などで毎年3兆円ずつ増えていくだけに、議論中の消費増税も長い道のりの一里塚にすぎない。

 だからこそ、税制の将来像を見すえて、消費税以外の税も議論を深める必要がある。

 法人税は国際競争の厳しさを考慮して実効税率の引き下げが決まっており、所得税や相続税が焦点となる。

 所得税では、5〜40%の6段階の税率区分を見直し、最高税率を45%に引き上げる案が出ている。課税の際に所得から差し引く各種の控除も、縮小の方向だ。すでに来年度税制改正案には、サラリーマンに適用される給与所得控除に上限を設ける案が盛り込まれた。与野党の対立から、今年度の税制改正で実現しなかった案だ。

 国の一般会計は、借金である国債発行額が税収を上回る異常事態が続く。消費税の増税とともに、所得が多い人の負担を重くするのは避けられない。

 しかし、高齢社会を支える現役世代に過度の負担がかからないよう、気を配らなければならない。医療、年金、介護の保険料負担と所得税とのバランスも議論する必要がある。

 重視すべきは、資産への課税だろう。その柱となる相続税も今年度に成立しなかった案がある。基礎控除を縮小し、最高税率も50%から55%に引き上げる内容だ。これが出発点になる。

 社会の格差が広がる中、親からまとまった財産を受け継いだりして資産を持つ人に、より負担を求めることは、公平性の観点からも望ましい。

 消費税を中心に据えながら税制の全体像を描く。どんな手順で改革を進めるか、素案を工程表づくりにつなげる。それが政府と与党の責務だ。

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国の出先廃止―あきれた国交省の暴走

 政府の出先機関改革に、国交省が反旗をひるがえした。閣議決定までした「原則廃止」を踏みにじる案をまとめたのだ。あまりの暴走に驚き、あきれる。

 野田首相は通常国会に法案を出すと確約している。国交省のちゃぶ台返しは改革の先送りを狙うもので、認められない。

 国交省の地方整備局、農水省の農政局といった出先機関の仕事と人員を都道府県に移管し、地域主権改革をすすめる。この大方針のもと、2年かけて議論してきた。昨年末には受け皿となる意欲と準備のある地域から移すことを決めた。

 これに関西広域連合と九州の知事会が名乗りを上げ、具体化への作業が始まった。そして、内閣府が受け皿となる新しい組織の原案をまとめた。

 だが、その組織の性格を決める根幹部分で、知事らの合議制で広域連携する内閣府案と、国交省が中心となってまとめた対案の両論を併記した。

 この国交省案が、地域主権の考え方を真っ向から否定している。中身はこうだ。

 新しい広域組織のブロック割りを法律で定め、知事とは別の専任の「長」を置く。出先機関の仕事と権限のほか、都道府県の仕事も集約する。そのうえで国が関与する仕組みを残し、大規模災害時には関係閣僚に包括的な指揮監督権を認める。

 これでは地方移管どころか、都道府県の権限も出先機関に吸い上げて国が管理しようという「スーパー焼け太り案」にほかならない。あわよくば、官僚主導による道州制への移行で、集権構造を温存しようという底意も透けて見える。

 「強大な中央集権のブロック機関をつくろうという発想にしか見えない」(兵庫県の井戸敏三知事)、「最悪の道州制だ」(滋賀県の嘉田由紀子知事)との批判は的を射ている。

 まさか、こんな国交省案が政府の成案になるとは思えない。だが、これまでもずるずると後退してきた民主党の地域主権改革のふがいなさをみると、一抹の不安もよぎる。

 なにしろ、いま民主党内では「東日本大震災で状況は変わった」「一括廃止は乱暴だ」といった意見が飛び交っている。まるで震災対応を錦の御旗に「出先廃止」を葬ろうといわんばかりなのだ。

 地方移管への不安は、理解できる部分も多い。けれど、それでも自治体に任せていくのが地域主権改革の原点のはずだ。

 近く成案をまとめる川端総務相は、改革の意義を踏まえて判断しなければいけない。

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