HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 20 Dec 2011 23:21:05 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:金正日総書記死去 東アジア激動に備えよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

金正日総書記死去 東アジア激動に備えよ

 北朝鮮の金正日総書記が死去した。民衆は飢えているのに核とミサイルを造り続けた。若い後継者が暴走しないよう、周辺国の連携した対応が必要だ。

 金総書記は享年六十九歳。死因は心筋梗塞だった。二〇〇八年八月に脳卒中で倒れ、今年は中国、ロシアを訪問するまでに回復したが、現地指導の列車内で急死したという。

 金総書記は労働党と人民軍の最高指導者であり、経済や外交も指揮してきた。食糧と日用品が慢性的に不足して民衆の不満は高まっており、独裁者の死は体制崩壊の序曲にもなりうる。

◆3代世襲の「王朝国家」

 北朝鮮の初代指導者は故金日成主席、次いで長男の正日氏が権力を継承し、今度はその三男正恩氏(28)が後継者に決まった。社会主義を掲げながらも、最高指導者は三代世襲という「王朝国家」の様相を示す。

 金総書記はナンバー2としての補佐役も含め、三十七年間、権力を行使してきた。その間、韓国は貿易額が世界トップ10に入ったが、北朝鮮は住民が飢餓に直面する悲惨な状態だ。

 国家運営に失敗した金総書記が目指したのは、軍を統治の中核とする「先軍政治」だった。〇六年と〇九年に核実験を強行し、日本を射程に入れる弾道ミサイルを配備して、米本土まで届く長距離ミサイルも開発中だとされる。大量破壊兵器を持つことで、周辺国を威嚇しながら外交上の譲歩を引き出す「瀬戸際戦略」を続けた。

 資金や資材は軍事に優先され、社会主義の根幹である配給制度は崩れた。国内に張り巡らされた公安警察が住民を監視し体制批判には厳罰を科して、巨大な監獄国家だとの非難もたえない。

 金総書記は限定的な改革・開放を試みたが、「資本主義社会の風」が吹き込むのを恐れ中途半端に終わった。〇九年末には経済統制を強めるためにデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を断行したが、モノ不足で超インフレを引き起こした。いま民衆は闇市場で工場や農場からの横流し品まで取引して、ようやく息をつないでいるという。

 正恩氏は昨年九月、労働党中央軍事委員会の副委員長に就任し公式の場に登場した。しかし、父と比べれば実績、カリスマ性とも明らかに足りない。党や軍の幹部たちが支えていくが、民衆が果たして指導者と仰いで忠誠を尽くすかどうか。

◆中韓は難民流出恐れる

 金総書記の死去をきっかけに住民が不平、不満を行動に移すようになれば、体制は大きく揺らぐ。携帯電話も平壌など都市部で徐々に普及しているという。食糧暴動が続いたり、北朝鮮からの難民(脱北者)が大量に流出する事態が起きるかどうか。中国や韓国が最も警戒していることだ。

 正恩氏が軍の忠誠を得るために、強硬路線に進む危険性は十分にありうる。核実験やミサイル試射の動きが見られたら、米国や中国など周辺国は強い警告を発して阻止する必要がある。

 正恩氏が当面、最高指導者の職位に就かずに集団指導体制を敷くこともありえよう。正恩氏に指導力がなければ、やがては党や軍の中枢で血なまぐさい権力闘争が起きる可能性もある。

 朝鮮半島、東アジアは激動期を迎えたといってよい。「貧しき軍事大国」に外交、安保の両面でどう対応するか、周辺国の緊密な連携がこれまで以上に求められる。

 中国は北朝鮮の貿易総額の七割以上を占め、金正恩体制の事実上の後ろ盾といえる。いっそうの改革・開放を促すよう、中国の役割はこれまで以上に重くなる。

 ウラン濃縮活動の停止など核開発の放棄に道筋が見えないまま、金総書記が死去した影響は大きい。米国は先週、北京で栄養食品支援をめぐり北朝鮮高官との協議をしたが、これをステップに核問題の交渉に進むのは極めて難しくなった。

 日本人の拉致問題で何らかの対応をとる余裕はまだなさそうだ。だが北朝鮮は経済支援を必要としており、日本側は粘り強く対話の機会を探す努力が必要だ。

◆民衆の食糧確保をまず

 北朝鮮が孤立をさらに深めれば、体制はやがて崩壊に向かうだろう。軍拡路線を止めて海外からの支援を引き出し、民生向上を図るのが優先課題である。国内が安定すれば、米国や韓国、日本とも交渉する余裕が生まれよう。

 北朝鮮国内には建国の父、金日成主席の銅像や記念碑がそれこそ無数にある。後継者、正恩氏は祖父や父に対する偶像化事業を、もうやめなくてはならない。まずは資金と資材を、民衆の食糧確保に向けるべきだ。

 

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