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冬の星を凍星(いてぼし)とも荒星(あらぼし)とも呼ぶ。季節風がするどく吹き抜けて裸木をひゅうと鳴らす。木枯らしに磨かれた北の空に北斗七星が立ち上がっている。南には三つの1等星をつなぐ「冬の大三角」が冴(さ)え、隣にはオリオン。有名な者たちの住む天空である▼その空の、どの辺りにあるのか。「ケプラー22b」なる星の記事を先日読んだ。生命に不可欠な水が液体で存在できる温度の星だという。太陽系外にあるそんな惑星を、米航空宇宙局(NASA)が初めて確認した▼セ氏22度と推定されるそうだから、生命の誕生にはまさに、♪いい湯だな――の適温であろう。熱すぎれば水は蒸発し尽くし、寒ければ凍りつく。液体でいられる温度の幅は広くない▼この星は600光年の彼方(かなた)にある。大きさは地球の2.4倍と聞けば、人口急増や資源の枯渇が心配な折、どこか羨(うらや)ましい。公転周期290日にも親しみがわくが、地球のような岩石の星か、木星のようなガス惑星かはまだわからない▼NASA以外にも最近、「第二の地球」候補の発見の報を聞く。生命の可能性のある星を、仏の研究チームも見つけた。こちらは20光年の先にある。地球外の生命、そして地球外文明。人類がひとりぼっちでないと分かる日が、やがて来るのだろうか▼漆黒に浮かぶ地球は、大気という皮膜で閉じられている。生命を満載したはかなく青い球だ。〈寒星や神の算盤(そろばん)ただひそか〉中村草田男。夜空を仰ぐとは、奇跡の星、地球を顧みる営みでもあろうか。