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2011年12月21日(水)付

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避難区域再編―帰れぬ人に厚い支援を

福島原発周辺の市町村から10万人を超す人が、政府の指示などに基づき避難を続けている。いちばんの胸の重しは、将来を見通せないことだ。政府は日曜日に、この避難区域を年間放射[記事全文]

整備新幹線―新規着工の無責任さ

整備新幹線の三つの未着工区間について、政府・民主党は同時に着工を認める方針だ。来年度予算で関連費用を手当てし、沿線自治体の同意など条件が整えば認可する。新たに着工するの[記事全文]

避難区域再編―帰れぬ人に厚い支援を

 福島原発周辺の市町村から10万人を超す人が、政府の指示などに基づき避難を続けている。いちばんの胸の重しは、将来を見通せないことだ。

 政府は日曜日に、この避難区域を年間放射線量に応じて三つの区域に再編する方針を、地元自治体に伝えた。

 4月をめどに▽20ミリシーベルト未満を「避難指示解除準備区域」▽20〜50ミリシーベルト未満を「居住制限区域」▽50ミリシーベルト以上を「帰還困難区域」と色分けする。一部の地域からとはいえ、ふるさとに帰るめどが示されることになる。

 ただ、同じ市や町の中で帰還時期の違いが出てくる可能性がある。区域の線引きをし、避難を解除する際は、住民が納得できるよう、データを示した上での丁寧な説明が欠かせない。安直な「安全宣言」では、また住民を惑わせるだけだ。

 直視しなければならない、重たい現実もある。

 線量が高い帰還困難区域は、数十年間続くとみられる。環境汚染により、これだけ広い範囲で人が住めなくなるのは、戦後の日本で初めてのことだ。

 住民は大切にしてきたものを理不尽に奪われる。十分な補償が必要なのは言うまでもない。

 第一原発が立地する双葉町の井戸川克隆町長は「『仮の町』を設けなければならない」と話す。ふるさとへ帰れぬ人たちのため、国が土地を買い上げる。移転先を確保し「第二の町」づくりを考える。つながりを保つ仕組みを整える。雇用や教育、個人の選択に合わせたメニューも用意する――。

 政府は支援策の組み合わせを早く示すべきだ。それが、除染した汚染土を保管する貯蔵施設について、場所探しを進める出発点にもなる。

 より線量の低い避難指示解除準備区域では、人々の帰還に向け、除染作業や生活インフラの復旧を急ぐことになる。

 だが、避難住民へのアンケートでは、元の住所に「戻る気はない」と答えた人が、若い世代ほど多かった。避難先での新しい生活、子育ての不安。避難指示が解かれても、迷い、悩む人は少なくなかろう。

 それぞれの選択を、尊重しなければならない。

 戻る人のための環境整備と同時に、戻らない人の生活支援も手厚くすべきだ。何より、人々の間で亀裂や対立がこれ以上広がらぬようにしたい。

 地域社会に線が引かれることは、残酷なことでもある。政府が取り組むのは、それだけ難しい、覚悟のいる作業である。

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整備新幹線―新規着工の無責任さ

 整備新幹線の三つの未着工区間について、政府・民主党は同時に着工を認める方針だ。来年度予算で関連費用を手当てし、沿線自治体の同意など条件が整えば認可する。

 新たに着工するのは、北海道新幹線の新函館―札幌(211キロ)、北陸の金沢―敦賀(113キロ)、九州・長崎ルートの諫早―長崎(21キロ)。総工費は約2兆7500億円とされる。

 2年前の政権交代の際、民主党は「コンクリートから人へ」との方針を打ち出し、公共事業を大幅に見直すと強調した。その一環で整備新幹線の新規着工を凍結。安定した財源の確保など五つの条件を満たすかどうか厳しくチェックし、着工する場合も優先順位をはっきりさせると説明してきた。

 今回の判断は、こうした基準を守っていない。

 財源では、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の「埋蔵金」を使う。機構は整備新幹線の線路を建設し、列車を運行するJR各社から貸付料を受け取っている。今年6月の法改正で貸付料を整備新幹線の建設に回せるようにした。当面は年400億円ほどという。

 この独法の埋蔵金は、今年度予算では最終的に震災復興のための補正予算に充てられた。

 国の財政難は深刻だ。震災復興のために臨時増税が決まり、消費税の増税も日程にのぼりつつある。「鉄道関係の収入は鉄道分野に」と特定財源化するような動きに、国民の納得が得られるだろうか。

 足りない分は国や自治体が負担する。1年あたりの負担額を抑えるため、通常は10年程度の工期を区間ごとに15〜25年程度に延ばす案が出ている。

 これにも首をかしげる。鉄道は、早くつなげてこそ効果がある。新規着工する3区間とも、その手前までの区間がまだ工事中で、完成はおおむね3〜6年後だ。せめて予算は工事中の区間に集中すべきだろう。

 着工への動きは、東日本大震災がきっかけとなった。日本の大動脈である東海道新幹線が不通になった場合の代替路線として、東京―長野の先、金沢へと工事が進む北陸新幹線の全線開通を急がねば、との主張だ。

 それなら、高速道路や空路も対象に東西のルートをどう確保すべきか、JR東海が進めているリニア中央新幹線との関係をどう整理するか、総合的に議論すべきだ。他の2線を含め、費用対効果の本格的な検討もおこなわれていない。

 着工凍結のなし崩し的な解除はあまりに無責任だ。

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