HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 19 Dec 2011 21:21:40 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:WTO合意断念 貿易ルールの再構築を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

WTO合意断念 貿易ルールの再構築を

 世界貿易機関(WTO)閣僚会議が新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の一括合意を断念する議長声明を発表した。貿易ルールづくりの機能不全であり、国際秩序の再構築を急がねばならない。

 WTOのラミー事務局長は閣僚会議閉幕後「ドーハ・ラウンドは頓挫」と語り、WTOのルールづくりが断念に追い込まれたとの認識を示した。そのうえで、ラミー氏は後発発展途上国の加盟手続き簡素化など、今回の閣僚会議の合意事項をバネに一括合意になお期待を寄せたが、交渉を再開できる状況にはない。

 交渉の頓挫は新興国の台頭などで生じた交渉力学の劇的な変化がもたらしたと見るべきだ。その現実を直視する必要がある。

 世界貿易は一九三〇年代の大恐慌を契機とした保護貿易蔓延(まんえん)を教訓に、第二次世界大戦後の四八年に誕生した関税貿易一般協定(ガット)をよりどころに自由貿易網を広げてきた。九五年にはガットを発展解消しWTOを創設した。

 二十三カ国で動き始めた協定は年を追うごとに加盟国が増え、今や百五十三カ国・地域に膨らんだ。WTOは交渉項目の一括合意を原則にルールを決めるため、利害調整に手間取り、ドーハ・ラウンドは既に十年を費やしている。

 混迷を決定づけたのは冷戦構造の崩壊だ。それまで米国や日本、欧州など西側で進めてきたルールづくりに中国が加わり、成長著しいインドやブラジルも発言力を強めて対立を先鋭化させている。

 さらに米国は財政赤字の拡大などで基軸通貨のドルの信認が揺らぎ、ルールづくりを覇権国が担ってきた秩序は終焉(しゅうえん)を迎えたとの指摘が現実味を帯びてきた。各国がWTOと距離をおき、二国間や東南アジア諸国連合などと結ぶ自由貿易協定(FTA)へと軸足を移す要因にもなっている。今や世界のFTAの数は三百に達した。

 日本は環太平洋連携協定(TPP)や日中韓、欧州連合(EU)とのFTAを結べば、世界の国内総生産の九割近くをカバーできる。しかし、経済力の強い国だけが利益を稼ぐ仕組みを新たな国際秩序にすれば、交渉力に乏しいアフリカなどの後発途上国は取り残されてしまうだろう。

 資源小国の日本は自由貿易の恩恵に浴し、成長を果たしてきた。途上国ともルールや利益をいかに共有していくのか。日本もその仕組みを積極的に発信し、強い国の利己的な行動ばかりが目につく秩序を排する役割を担うべきだ。

 

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