HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 17 Dec 2011 23:21:45 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:あの「奇跡の一本松」にほど近い岩手県陸前高田市の寺の境内に…:社説・コラム(TOKYO Web)
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 あの「奇跡の一本松」にほど近い岩手県陸前高田市の寺の境内に、桜の木が植えられた。木造家屋が根こそぎ流された被災地の情景が、眼下に広がっている▼津波が到達した地点に桜の木を十メートル間隔で植えて、震災の記憶や津波の怖さを後世に伝える「桜ライン311」の活動だ。市内の約百七十キロに約一万七千本を植樹することを目指し、協賛金やボランティアを募っている▼実行委員会の事務局を務めるカキ養殖業の佐藤一男さんには後悔がある。浜の仲間と酒を飲むたびに、「いつか、防潮堤を越える津波が来る」という話題が出ていたからだ▼「外に向かって、もっと大きな声で言っていれば、もう少し助かった命があったかもしれない」。次の世代に記憶を伝えることが生き残った者の義務だと思う。地震に備え、せめてここまでは逃げてほしいというセーフティーラインをつくりたいと佐藤さんは願う▼先月から四十本以上が植えられた。復興のシンボルだった一本松の保護を断念したいま、桜を植える活動は家族や住宅を失った被災者の希望の灯である▼「人にそれぞれの履歴書があるように、木にもそれがある。木はめいめい、そのからだにしるして、履歴をみせている」(幸田文著『木』)。被災者やボランティアが植えた桜の木々は、津波の教訓を年輪に刻み込みながら、後世に伝えてゆくに違いない。

 

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