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私たちは指先ひとつで、ある一瞬に永遠の命を授けることができる。写真の話である。シャッターが切られ、ひとたびフレームに納まった表情や景色は、時計の針と同じ速さで遠ざかりながら、過去を語り続ける▼年末恒例の報道写真展が、東京・日本橋の三越本店で始まった(無料、25日まで)。展示作の半数近くが震災関連である。過去と括(くく)るには鮮烈すぎる恐怖や悲しみが、時を止めて並んでいる▼会場入り口で迎える読売新聞東京本社の「ままへ」は、両親と妹を津波に奪われた女の子の寝顔を捉えた。覚えたての字で母への思いをつづるうち、4歳はノートに突っ伏して眠ってしまう。撮影した立石紀和記者(39)はこの子の家に通い、一緒に遊び、ここまで寄れる関係を築いたという▼「発生時の国会」も伝えるべき一枚だろう。丸テーブルの下にもぐり込む速記者たち。その向こうで、当時の菅首相が椅子のひじ掛けをつかんで宙をにらむ。閣僚の口はそろって半開きだ▼若い歓声が聞こえてくる写真もあった。放射線を気にかける福島県の中学校。廊下でハードルの練習をする陸上部員に、つかの間の笑顔がはじける。復興の障害を越える力は、拙速な「事故収束」宣言ではなく、次代の愛郷心から生まれる▼被災者らが自筆のメッセージを掲げる「読む写真」がある。子どもたちの小さな決意に、深くうなずいた。「もらった命 たから かんたんに失わないようにがんばって生きよう」。写真は時として、未来も語る。