防衛省は次期戦闘機(FX)をF35とする方針を固めた。米軍でさえ運用していない開発途上の機体を選定する前代未聞の事態となった。未完成の機体を選んで「空の防衛」は大丈夫なのだろうか。
F35は開発が遅れ続け、先月、米政府が米議会に「二〇一八年ごろの開発終了」と正式に報告した。防衛省が納期とする一七年三月にどう考えても間に合わないが、米政府は「間に合う」と請け合っている。米政府が予算編成権を握る議会にうそをつくはずもないので「間に合う」は日本向けのセールストークか単なる意気込みの表明と考えるほかない。
米空軍では使えない未完成の機体でも、日本の航空自衛隊には提供するというのだろうか。その場合、日本は操縦士の安全や防空態勢の弱体化と引き換える形になる。F35の開発に出資したオーストラリア、カナダでさえ導入見送りを検討する中、日本は絶好のお得意さまなのだろう。
来年度予算で購入する最初の四機は米政府が価格や納期に決定権を持つ対外有償軍事援助(FMS)の枠組みで提供される。防衛省に示した価格、納期などの条件が一変するおそれがある方式だが、米国製を選んだ以上、言いなりになってしまいかねない。
一九八〇年代の次期支援戦闘機(FSX)選定では、米国製のF16戦闘機を母体に日米が共同開発すると決まった途端、米国は約束をほごにして心臓部にあたるソフトウエアの開示を拒否した。ちゃぶ台返しは経験済みである。
FMSで納入される四機の価格が高騰したり、納期が遅延すれば、その後、導入される四十機近い機体の価格も上がり、導入時期がずれ込む。F35と交代するF4戦闘機は退役するため、戦闘機が不足する事態も予想される。それさえも織り込み済みというなら、航空機業界でささやかれていたように、FX選定はF35を導入するための「出来レース」だったと批判されても仕方がない。
選定作業の途中でF35の深刻な不具合が伝わり、与野党の防衛族議員から「FXは空中戦に強い欧州製のユーロファイターとし、およそ十年後に予定されるF15戦闘機の後継機選びでF35を候補にする」との二段階論が浮上したが、実現しなかった。
「最新鋭機がほしい」という航空自衛隊のがむしゃらな突っ張りが日本をとんでもない方向に導くおそれが強い。
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