HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 48817 Content-Type: text/html ETag: "a2871-166d-4b40f8a4affeb" Expires: Thu, 15 Dec 2011 03:22:13 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 15 Dec 2011 03:22:13 GMT Connection: close ヒッグス粒子 根源の謎解明に少し近づいた : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


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ヒッグス粒子 根源の謎解明に少し近づいた(12月15日付・読売社説)

 宇宙の起源を知りたいという根本的な問いの答えに、人類が一歩近づいたのだろう。

 宇宙誕生の直後、万物に質量を与えた「ヒッグス粒子」の痕跡を示す確度の高いデータが見つかった。

 スイスにある素粒子物理学の国際拠点、欧州合同原子核研究機関(CERN)がそう発表した。

 宇宙の成り立ちを説明する素粒子物理学の「標準理論」が存在を予言し、40年以上にわたり、世界の物理学者が探索してきた。

 他の素粒子に質量を与える特質から「神の粒子」と言われるヒッグス粒子の最終確認に向け、データを積み重ねることが必要だ。

 今回の発表は、CERNの大型実験装置で得た研究に基づく。

 1周27キロ・メートルの円形加速器を使っている。この中で原子核を構成する「陽子」を光速近くに加速し、二つの陽子を衝突させる。

 その際に出る高エネルギーで宇宙創成時の状態を再現し、飛び出してくる様々な粒子から、ヒッグス粒子の痕跡を探し出した。

 CERNでは複数の実験グループが挑んでおり、今回は、東京大学など日本の研究機関が中心のグループと、欧米主体のグループがそれぞれ成果を上げた。

 日本は長年、素粒子物理学をお家芸としてきた。

 ノーベル物理学賞受賞者も1949年の湯川秀樹博士以来7人を輩出しているが、そのうち6人は素粒子物理学の分野からだ。

 3年前に受賞した南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授は、ヒッグス粒子の役割に関し、理論的な土台を考案したことで知られる。

 こうした研究者層の厚さが、歴史的な成果を生んだと言える。

 宇宙や万物の根源の探求は続く。ヒッグス粒子はどのように生まれたか。素粒子ごとになぜ質量が異なるのか。宇宙の膨張にどう影響したか。謎はなお多い。

 今後も日本の貢献が期待されている。研究者の奮起とともに、政府もこの分野に予算を投入したり、人材育成に対する支援を強化したりすることが大切だ。

 日本にCERNを上回る規模の加速器を国際協力で建設する構想が浮上している。東日本大震災の被災地である岩手県などが候補地となっている。

 ヒッグス粒子の解明を踏まえて、さらに研究を広げる国際拠点ができれば、復興へ夢と希望を与えることになろう。

 経済への波及効果も大きいはずだ。政府として、積極的に後押しすべきテーマである。

2011年12月15日01時05分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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