生活保護制度の改善策を協議していた国と地方が、中間とりまとめを決定した。重要テーマである働き盛り世代の就労支援は強化するが、自立へは確実に就労できる息の長い取り組みが必要だ。
生活保護受給者は現在約二百六万人、保護費は三兆円を超える。
膨張する費用に対応するため、厚生労働省と地方が決めた改善策は、就労・自立の支援、給付の抑制、不正受給の防止の三点だ。
給付を抑える対象は、保護費の約半分を占める医療費である。受給者は医療費の本人負担がない。そのため過剰に受診をしがちだ。医療機関にも不要な投薬や検査が指摘されている。
改善には治療費の明細書のチェックを徹底する。必要な医療は削れないが、ムダは監視すべきだ。
不正受給防止には、保護申請時の資産調査や暴力団のチェック、本人確認などを厳しくする。制度の信頼性を高めるには、給付の適正化は前提だろう。
最も重要な課題は、働きたいのに働けずに保護を受ける現役世代への就労支援だ。受給者数は十年前の三倍を超える。
受給開始から半年を過ぎると受給生活が長期化しやすい。申請時からハローワークと福祉事務所が連携するなど早い段階からの支援を盛り込んだことは当然である。
一方、求職者支援制度では疑問を感じるルールを決めた。生活費を受給しながら職業訓練を受講し就労につなげる制度だが、訓練を理由なく休み続けた場合、保護の打ち切りができるようになる。
これでは就労する前に保護が打ち切られる事態も懸念される。憲法で保障された最低限の生活を守る制度なのに、事実上の「有期化」だと受給者支援をする市民団体からも反発がでている。
訓練内容がニーズに合わなかったり、病で受講できない人もいるだろう。受給者の事情をよく見極め、必要な支援は受けられるようにする配慮が必要だ。
同時に受講者が確実に就労できなければ、制度の意味がない。就労できても非正規なら、低収入でまた保護を受ける状況に追い込まれるかもしれない。就労は長期にわたる支援が要る。
生活保護は、事情で生活に行き詰まった人が最後に頼る制度だ。受給者増は、低い年金額や働いても生活できない非正規労働など社会保障制度そのものがほころんでいることを示している。生活保護の受給者を減らすには、社会保障全体の改革を進めるしかない。
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