復興施策の司令塔となる復興庁の設置法が、先の臨時国会で成立した。第三次補正予算、復興特区とともに東北再生への仕組みが整った。被災地本位の、きめ細かな“現場主義”を貫いてほしい。
震災発生から九カ月も要し、ようやく復興のスタートラインとは、あまりにも遅すぎる。この間、首相交代や閣僚の問責決議など政争が目立ち被災者の政治不信は増幅した。与野党とも猛省し復興を軌道に乗せることで信頼を回復してもらいたい。
最後までもめたのは復興庁の権限だった。施策の立案・調整にとどめていた政府案に対し、自民、公明は府省縦割りを排除するため事業執行も担う「スーパー官庁」を主張した。予算要求や各府省配分を一元的に担うことで折り合いがついたが、詳細設計を先送りしており懸念が残る。
組織上は首相をトップに他府省より格上に位置付け、担当大臣に各府省への勧告権を与える。二百人規模と想定される職員の大半は各府省からの出向、あるいは兼務の「寄せ集め官庁」となる。事業執行を取り仕切る国土交通省や農林水産省からの出向組が、府省間の垣根を越えられるのか微妙だ。
本庁は霞が関、出先の復興局は岩手、宮城、福島三県に置く。より重要なのは沿岸部の被災地に設ける支所の役割だ。地元自治体や民間の人材も活用し、顔が見える役所として人間関係を築きながら仕事をしてほしい。発足は来年三月十一日までにというが、早ければ早いほど被災者は安心する。
特区は被災した十一道県の二百二十二市町村すべてが対象で、土地利用の規制緩和や企業誘致の税制優遇、さらに国費百パーセントの復興交付金も受けられる。来年一月にも認定が始まる。
ただし、政府が用意したメニューから自治体が選択するという仕組みは、中央集権そのままだ。当然、自治体側から規制緩和の追加・拡充要望が予想される。交付金の使途の是非をめぐる議論も起こりそうだ。
法案審議の段階で国会が自治体側から特別意見書を受け、必要に応じて議員立法で規制緩和できるよう修正された。交付金でも自治体の自主性を尊重する文言が加わった。永田町と霞が関ではここまでが精いっぱいだ。
本来なら各復興局長を三県知事が兼ね、権限を移すぐらいの発想があってもよかった。復興への工程は、民主党政権が目指す地域主権改革にほかならないからだ。
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