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2011年12月15日(木)付

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発電コスト―火力の効率化を急ごう

原子力や火力など電源別の発電コストの試算が、政府の「コスト等検証委員会」から示された。今後のエネルギーを考えるうえで重要な目安となる。電源別の試算は04年にもおこなわれ[記事全文]

八ツ場ダム―予算急がず検証深めよ

民主党政権がマニフェストに沿って、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の事業中止を宣言して2年余り。政府の検証作業が終わった。来年度予算案でダム本体の工事費を認めるか、政権の判断が問われて[記事全文]

発電コスト―火力の効率化を急ごう

 原子力や火力など電源別の発電コストの試算が、政府の「コスト等検証委員会」から示された。今後のエネルギーを考えるうえで重要な目安となる。

 電源別の試算は04年にもおこなわれた。だが、今回は想定される事故の費用や二酸化炭素(CO2)対策費、国からの交付金や研究費といった「社会的費用」を加えて計算したところに大きな意味がある。

 焦点の原子力は、1キロワット時あたり8.9円。前回試算から3円上昇した。しかも、「最低でも」という数字だ。事故の損害額は5.8兆円を前提としており、1兆円増えるごとに0.1円あがる。

 交付金や高速増殖炉「もんじゅ」などの技術開発費が含まれる政策経費も、他の電源に比べ桁違いに大きい。これまでの試算が、いかに「架空の数字」だったか。

 火力も燃料代の高騰やCO2対策費を反映し、04年試算より高くなった。それでも石炭や液化天然ガス(LNG)はコスト面で原発と差がなくなった。

 風力発電も「原発並みのコストになりうる」とされた。家庭での省エネ製品への切り替えを「発電」に見立てると、相当な効果があることもわかった。こうしたデータを今後の政策に生かすことが必要だ。

 とりわけ、LNGや石炭火力は、自然エネルギーが育つまでの間、原発に代わる即戦力となる。発電の効率化やCO2の削減、廃熱の利用促進、燃料の輸入価格を抑える調達戦略を政策的に支援していくべきだ。

 火力発電所を増やしていく際にも、既存の電力会社に依存しないようにしたい。

 電力卸売市場などの活性化とともに、ガス会社や石炭を使う重工業、臨海部に土地をもつ企業や自治体の参加を促し、競争を通じて技術の向上やコスト低減を進めることが大切だ。

 これまで原発の発電コストをめぐっては、04年の試算が低すぎると疑問視する人たちから複数の試算が提示され、原発推進派との間で議論が平行線になりがちだった。

 今回はさまざまな主張や海外データも吟味したうえで、条件や計算方法、盛り込まなかった要素と理由など、すべてのデータが公開され検証できるようになっている。

 年明けからは、中長期的な電力確保のあり方をめぐって、エネルギー政策の論議が本格化する。その際、今回の試算を基礎データとして共有し、脱原発と電力改革に向けて議論を深めてほしい。

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八ツ場ダム―予算急がず検証深めよ

 民主党政権がマニフェストに沿って、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の事業中止を宣言して2年余り。政府の検証作業が終わった。来年度予算案でダム本体の工事費を認めるか、政権の判断が問われている。

 国土交通省に置かれた有識者会議が決めた検証手順に従い、事業主体の国交省関東地方整備局は9月、「八ツ場ダムを含む対策が最も安上がり」との試算結果を示した。整備局によるパブリックコメントの募集、学識者や住民、関係自治体からの意見聴取など段階を踏み、有識者会議の了承を取り付けた。

 あとは前田国交相の決断を残すだけだ。自治体など推進派は早期着工を求めている。

 私たちは、ダム反対派をまじえて集中討議するよう主張してきた。検証の対象とされた全国83のダムの中でも、八ツ場ダムは公共事業見直しの象徴として国民の関心が高いからだ。

 新たに学者グループが反対の声をあげたことに注目したい。元京都大学防災研究所長の今本博健氏らが呼びかけ、賛同者は120人を超えた。河川工学や土木分野に加え、地質、環境、生物、経済など様々な分野から集まっている。

 八ツ場ダムの洪水調節効果をめぐる計算が変わった根拠は何か。水の需要は減っているのに自治体の古い推計に基づいたままでいいのか。建設予定地は浅間山が近く、火山灰などが堆積した地盤は巨大地震に耐えられるのか――。三つの問題点と事業主体の整備局が自ら行った検証の限界を指摘し、「公開の場で科学的な検証を」と訴える。

 国交省の有識者会議に討論会を申し込んだが、実現しなかった。同省の担当部署から断りの連絡が入った後、申し込んでいた討論会とほぼ同じ時刻に有識者会議が開かれ、整備局の検証が了承された。

 2年前に国交相として事業中止を打ち出した民主党の前原政調会長は、党の分科会が事業の問題点を並べた意見書をまとめたことを受け、「政府の回答が明確にならない限り、本体工事は認められない」と語った。

 この2年、民主党の方針がぶれては地元住民を振り回してきた。これ以上の混乱を避けるため、各方面からの疑問点を徹底的に検証したうえで、政府・与党として決断する必要がある。

 地元では付け替え道路などの関連事業で、総事業費4600億円のうち8割近くが投じられた。しかし、本体工事の予算計上を急いではならない。期間を区切り、反対派をまじえて検証作業を続けねばならない。

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