HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 11 Dec 2011 01:21:35 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:週のはじめに考える 欧州統合の試練は続く:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

週のはじめに考える 欧州統合の試練は続く

 債務・金融危機の渦中にある欧州連合(EU)が英国を除く新条約の制定で合意しました。財政統合を目指す方向は妥当ですが、道のりは遠く険しい。

 先週末まで息詰まるような十日間でした。欧州が危機の打開策作りに失敗すれば、世界経済は信用収縮の嵐に見舞われ、再び深刻な不況に陥りかねない。そんな懸念が世界を覆っていました。

 連日の協議を経て、最終的に首脳会議でまとまった対策は財政規律の強化と当面の金融支援という二つの要素で成り立っています。いずれも方向は正しい。

◆金融支援を時間稼ぎに

 まず、英国を除くEUの二十六カ国が国内総生産(GDP)比で3%以上の財政赤字を出した場合には、自動的に制裁を科すような新しい条約を結ぶ。これまでも赤字条件の取り決めはありましたが今回、制裁発動ルールを一層厳格にしました。

 一方、金融支援では欧州の各国が国際通貨基金(IMF)に最大二千億ユーロを拠出し、危機に陥った国にIMFが緊急融資する仕組みを作りました。新しい欧州安定メカニズム(ESM)という融資機関も、当初より一年程度、前倒しして発足させます。

 ひと言で言えば、金融支援でなんとか時間を稼いでいるうちに、財政統合を進めて問題の根源を取り除こうという対応策です。

 欧州危機の根本的な原因は先週の「週のはじめに考える」で指摘したように、金融政策を欧州中央銀行(ECB)に一元化して通貨ユーロを導入した一方、財政政策を各国に任せたままにした点にありました。金融と財政がばらばらだったのです。

 今回、財政赤字に厳格な条件を課したのは欧州全体の財政規律を強化し、財政政策が統合に向かう一歩になります。しかし、これで十分とはいえません。

◆危機が示す政治的問い

 まず規律を強化するといっても、各国が憲法を改正し新条約を締結、批准するまでには長い時間がかかります。半年や一年で可能になるかどうか。金融市場から見ると、半年であっても投機を仕掛けるには十分な時間です。議論がもめている間に新たな危機が生じない保証はありません。

 英国が新条約に反対して参加しない決断を下したのは、EUの団結にひびが入った証拠でもあります。ユーロに加盟していない英国にしてみれば、いまも独自の中央銀行を維持しているのですから、ユーロの傘の下で財政政策を束縛される理由がないのです。

 同じ理由で今回、新条約に賛成した国であっても、非ユーロ圏諸国の中には議会でもめて枠組みから離脱する国が出る可能性も残っています。そうなると、EUはいま以上にユーロ圏と非ユーロ圏という統合水準が異なる二つのグループに分裂する形になります。

 当初、議論に出ていたユーロ共同債の発行は独仏の反対で見送られました。各国が共同債で財政赤字を賄うようになれば、財政統合の密度は濃くなる。

 ところが、そうなると他国の信用にただ乗りする国が現れ、赤字債発行が楽になるので問題が深刻になる懸念があります。

 今回の結末は結局、財政統合への一歩といっても罰則を強めただけで「これ以上の手だてに踏み込めなかった裏返し」と消極的評価が妥当なのかもしれません。

 一方、金融支援も力不足が目立ちます。債務危機がイタリアなどに広がった現状をみれば「三兆ユーロ規模の安全網が必要」という声が出ていた一方、まとまった支援規模は既存の欧州金融安定化基金(EFSF)に新設のIMF融資、さらに欧州安定メカニズムを合計しても、融資能力は合計一兆ユーロ強にとどまります。

 金融危機の歯止め策として期待されていたのは欧州中央銀行による重債務国の国債買い上げだったのですが、こちらはインフレを心配する総裁が断固、拒否する姿勢を鮮明にしました。

 欧州危機が示しているのは「十七カ国に広がったユーロ圏の人々が他国の困難を救うために、どこまで自分の痛みを受け入れるか」という、すぐれて政治的な問いであるように思います。

 同じ国であれば「同じ国民なのだから」という連帯感で共有しやすい。しかも自国通貨なら、通貨価値が下がれば財政削減を迫られる自動メカニズムも働きます。

◆週明け市場が評価する

 ところがユーロ圏は通貨を一元化した一方、年金制度や価値観、民族、文化、歴史も異なる人々がいる。その違いを政治的に乗り越えて「運命をともにする」という決断ができるかどうか。

 ひとまず首脳たちは中間回答を出しました。それが合格点に達しているかどうか、週明けの市場が評価を下します。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo