臨時国会が延長されずに閉会した。東日本大震災からの復旧・復興のための予算や関連法は成立したが、それ以外の懸案はほとんどが先送りだ。身内を守るために幕引きを急いだとしか思えない。
国会最終日。一川保夫防衛相と山岡賢次消費者行政担当相の問責決議が参院で可決されたが野田佳彦首相は続投させると表明した。
首相は次のように考えているのだろう。両大臣が今辞めれば非を認めることになり自分に任命責任が生じる。続投すれば国会を延長しても野党の審議拒否で空転する。ならば閣僚辞任も国会延長もしないのが得策だ。
来年の通常国会前に内閣改造を行って交代させる「定期異動」なら両大臣は傷つかず、一川氏を参院から送り出した輿石東民主党参院議員会長兼幹事長や、両大臣が属する小沢一郎元代表支持グループの反発を買うこともない、と。
首相や民主党にとってはそれでいいのかもしれないが、首相の身内を守るために重要案件が先送りされては、国民はたまらない。
臨時国会では二〇一一年度第三次補正予算と財源確保法、復興庁設置法、復興特区法など、首相が意気込んでいた復興関連の予算、法律は野党の協力で成立したものの、それ以外は軒並み先送りだ。
例えば国家公務員の給与を平均7・8%削減する特例法案。不成立で年間約二千九百億円の復興財源に穴が開く。政府は給与の0・23%減を求めた人事院勧告の実施も見送り、九日支給の冬のボーナスは平均4・1%増となった。
首相と閣僚ら政務三役は特例法案の成立を待たずに給与の一部を自主返納すると、首相が表明したことは評価できるが、国会議員にかかる経費の削減は手付かずだ。
復興財源に充てるために四月から毎月五十万円減額された議員歳費は十月分から満額に戻り、約三百二十億円に上る政党助成金の削減は検討すらされない。
復興増税や社会保障の給付減など国民に痛みを強いるばかりで、政府や国会が身を削る努力すらしないのは納得できない。こんな状況では将来の消費税率引き上げなど認められるはずがない。
喫緊の課題である衆院の「一票の格差」是正や、派遣労働者を保護する労働者派遣法改正案、郵政「改革」法案も、与野党が協議に入りながら成立は見送られた。
党利党略の駆け引きに終始し、立法という国会本来の役目を果たしているとは言い難い。これでは国民の政治不信は募るばかりだ。
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