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ユーロの現金が出回る前、この通貨の漢字表記について雑文を書いたことがある。中国語の「欧元(オウユワン)」では味気ない。おしゃれな欧風で「遊露」をあてたいけれど、前途の険しさを思えば「憂路」かと。10年後、これほどの憂いになるとは露知らず▼通貨統合の弱みは当時から言われていた。財政は国ごとなのに、貨幣と金融政策だけ一緒にする半端である。ある国が野放図に借金を増やせば、ユーロの信用が揺らいで他国に累が及ぶ。まさに目下の危機だ▼英国を除く欧州連合(EU)各国が、財政規律を締め直すことを申し合わせた。EUの本丸、ドイツやフランスの国債までが格下げ圧力にさらされる中、背水の合意だった▼せっかちな市場と、じれったい民主主義。マネーの奔流に比べ、EUや各国議会の意思決定はのろく、燃える家で防火対策を相談する図にも見える。それでも、血相を変えたリーダーたちが徹夜で談判する姿は悪くない。国益のため、明日のためにもがくことこそ、政治家の仕事だから▼さて、東の借金大国である。国会は問責決議二つを残して閉じ、重要法案は先送りされた。ムダ減らしにも、増収策にも見るべき進展はない。与野党の溝どころか与党内さえまとまらず、世界の激動とは別の時間が流れるかのよう▼市場に迫られての改革のつらさは、欧州が身をもって示している。ユーロを案じているうちに、円もいつ「炎(えん)」になるか分からない。内向きの政争ではなく、真っ当にもがく政治家を見たい。