副作用への懸念から、乳幼児が受けるポリオ(小児まひ)の予防ワクチン接種を控える動きが広がっている。接種を控えると感染の危険がある。より安全なワクチンの導入を急ぐべきだ。
「安全な不活化ワクチンの接種は、医療機関が予約受け付けを開始して十分で埋まる」「予約をなんとか取ろうと、両親が同時に医療機関に電話し続ける」
こんな話を聞くと、不活化ワクチンを求める保護者の切実さを実感する。
乳幼児のポリオワクチンは、予防接種法で接種の努力義務が課されている。現行の生ワクチンは公費で受けられるが、まれにまひの副作用がある。
より安全な不活化ワクチンは国内導入が決まっている。だが、導入時期は早くても二〇一三年春の予定だ。そこで医療機関などが独自に輸入するケースが増加、そうした医療機関に希望者が殺到している。ポリオ患者らでつくる「ポリオの会」によると、こうした医療機関は二百カ所以上になる。
生ワクチンの副作用は百万人に一、二人の確率だ。副作用による健康被害を受けた人は最近十年間で十五人いた。だが、保護者にすれば確率の問題ではない。
一歳未満児の母親を対象にしたベネッセの調査では、生ワクチン接種を決めかねている人、しばらく接種を見送った人、不活化ワクチンを選んだ人で半数を超えた。保護者は悩んでいる。
独自輸入した不活化ワクチンは、未承認のため健康被害の救済制度がないという問題点がある。
厚生労働省が緊急輸入すれば解決するが、疾病のまん延がその要件だとして動かない。
神奈川県が独自輸入による接種に乗り出した。十一月に予約受け付けを始め約二週間で千百二十二人が予約した。この反響からも生ワクチンへの不安は“まん延”しているといえる。
心配なのは接種を控えて感染してしまうことだ。今年四〜六月の生ワクチン接種者数は昨年同期に比べ17・5%減った。病気になっては元も子もない。
医薬品の安全確保のため承認まで時間がかかるのは理解できるが、厚労省は不活化ワクチンの国内導入手続きを早めるべきだ。
予防接種は子どもたちの命を守る大切な子育て支援である。政府・与党は「チルドレン・ファースト」と子育て政策を重要な柱に掲げるのなら、ワクチン行政もこの意識で取り組んでもらいたい。
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