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ますます、政治の風景がすさんでいく。きのう臨時国会が閉幕した。震災復興に向けた第3次補正予算や、復興庁設置法などは辛うじて成立させた。だが、あと一[記事全文]
航空自衛隊の次期戦闘機(FX)の選定作業が、大詰めを迎えている。米空軍の次の主力戦闘機となるF35、米海軍が空母艦載機に使っているFA18、欧州4カ国が共同開発したユー[記事全文]
ますます、政治の風景がすさんでいく。
きのう臨時国会が閉幕した。震災復興に向けた第3次補正予算や、復興庁設置法などは辛うじて成立させた。
だが、あと一歩のところまで来ていた重要法案は、ことごとく先送りした。
懸案だった派遣法改正案は、衆院の委員会で可決したのに成立しない。国家公務員の給与引き下げは、与野党が同じ削減幅を掲げながら合意できない。
会期を延長すれば成果もあがったかもしれないのに、与野党ともやろうとしなかった。
さらに国会の「さぼり」を象徴したのが「一票の格差」をただす選挙制度改革だ。与野党が持論をぶつけあっただけで、ちっとも進まない。
何という職務怠慢か。無責任さにあぜんとする。
そしてまた残ったのが、参院での問責決議だ。一川保夫防衛相と山岡賢次消費者相に対する決議が可決された。
振り返れば、昨年の臨時国会でも当時の仙谷由人官房長官らへの問責決議があった。それを機に野党は一部で審議を拒み、与党は混乱を恐れて国会延長を見送った。なんとも似たような展開ではないか。
少し違うのは、一川氏の場合は職にとどまるべきでないことが明らかな点ぐらいだろう。
野党は今回も一川氏らが続投すれば、来年の通常国会での審議に応じない構えだ。だが、法的拘束力のない参院決議を振りかざすのは、もうやめよう。
震災復興、社会保障改革、欧州危機など難問が山積している。もっと建設的に政策論争をすべきだ。政局の駆け引きばかりの茶番劇を、テレビの再放送のように見せられても困る。
ただ、こんな荒涼たる政治を招いた第一の責任は与党、とりわけ野田首相にある。
ひとつは国会運営の失敗だ。復興増税に加えて消費増税にも取り組もうというときに、官の身を削る公務員給与の削減もできずに、どうやって国民に負担を求めるつもりなのか。これでは与党内の求心力を失い、国民にもそっぽを向かれる。
ふたつめは、そもそも一川、山岡両氏を閣僚に起用したことだ。ともに小沢一郎元民主党代表に近く、党内融和に配慮した閣僚起用とされた。だが、山岡氏のマルチ商法関連の話など、広く知られた話だった。
それを、いまさら問責理由にする野党にも驚くが、そんな人選をした首相も反省すべきだ。
ここで政治を立て直せるか。首相の正念場だ。
航空自衛隊の次期戦闘機(FX)の選定作業が、大詰めを迎えている。
米空軍の次の主力戦闘機となるF35、米海軍が空母艦載機に使っているFA18、欧州4カ国が共同開発したユーロファイターの3機種から、来週中にも防衛相が最終決定する。
維持費を含めると、約40機で1兆円規模の大型調達である。約30年ぶりの主力戦闘機選びであり、政府が国民に対して、きちんと選定理由を説明するのは当たり前のことだ。
しかし、日本の軍用機選定には、不透明さや疑惑が付きまとう不名誉な過去がある。
古くは、不正疑惑が国会でも追及されたダグラス・グラマン事件があった。2000年には、空自の練習機選びで、スイスのメーカーと競った富士重工業が常識を超す値引きをして落札し、スイス政府から抗議されたこともある。
今回は、中国やロシアが高い機動性やレーダーに映りにくいステルス性を備えた次世代機の開発に乗り出すなか、日本の選択に世界も注目している。
だからこそ、汚点の上塗りは許されない。
このため、民主党政権は透明性を確保しようと、初めて防衛省の政務三役を選定協議に加えたうえ、事務次官通達で具体的な公表方針を示した。
一川防衛相も「国民から疑念をもたれないような形で決める必要がある」と、理由の開示に前向きだった。
ところが終盤になって、省内から「価格や性能が公表されると、参入業者の今後の商戦に支障が生じる」などと説明を避けようとする声がもれ始めた。
これまでも、省内で露骨なまでに下馬評が高かったF35については、数々の疑問にほとんど答えてきていない。
まだ開発段階にあるF35は、今年に入ってからも多数の不具合が見つかり、運用開始が18年ごろにずれ込むとされる。納入期限の16年度末に間に合うのかが危ぶまれている。
そもそも、開発中の機体を導入した前例もない。
米国防予算の大幅削減のあおりで、価格がつり上がる恐れはないのか。他機種より秘匿度の高い軍用技術が多用されているため、国内の航空機産業は生産や修理が制約されるが、その打撃はどうするのか。
防衛省にとって不都合な情報を、「営業秘密」を理由に伏せることがあってはならない。
政府には機密事項を除き、数々の疑問に丁寧に答える責務がある。