HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 47984 Content-Type: text/html ETag: "f4eb4-12f9-4b3831406ba72" Expires: Thu, 08 Dec 2011 02:21:45 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 08 Dec 2011 02:21:45 GMT Connection: close 12月8日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


現在位置は
です

本文です

12月8日付 編集手帳

 石垣りんさんに『雪崩(なだれ)のとき』という詩がある。「平和」を山に積もった雪にたとえている。「戦争」の雪崩を引き起こしたのは、(こだま)のように響いたある言葉だという◆〈“すべてがそうなってきたのだから/仕方がない”というひとつの言葉が/遠い(みね)のあたりでころげ出すと/もう(ほか)の雪をさそって/しかたがない、しかたがない/しかたがない…〉◆いったん転がりだしたら止まらない戦争のありようを詩人の比喩は伝えている。日米開戦からきょうで70年になる。当時の国力差をみれば、航空機の生産力は日本の6倍、鉄は20倍、石油は740倍――言葉の谺とは怖いものである◆英霊がイギリス人の幽霊と思われたり、真珠湾が三重県と勘違いされたり、B29が柔らかい鉛筆に間違われたりと、笑えない笑い話が聞こえてくるご時世である。二つの原爆忌や終戦記念日と同じように、折に触れて記憶を新たにしていい日だろう◆小欄ではこれまで繰り返し、“言葉狩り”に非を鳴らしてきた。ほんとうは、条件付きで例外にしたい言葉がある。列島がきな臭い空気に包まれたときの「しかたがない」である。

2011年12月8日01時30分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です