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天声人語

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2011年12月8日(木)付

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 貧乏くじと言うべきか、東郷茂徳は日米開戦と終戦の時に外務大臣だった。開戦後に退いたものの、再び請われたのは人物ゆえだろう。戦争回避に全力を尽くしたが報われず、戦後にA級戦犯として禁錮刑を受けた▼獄中でよく歌を詠んだ。他のA級戦犯への目は厳しい。〈此人等(このひとら)国を指導せしかと思ふ時型の小きに驚き果てぬ〉〈此人等信念もなく理想なし唯熱に附するの徒輩なるのみ〉。あれほど権勢を振るっていた軍人らの、一皮むいた「小物ぶり」への憤りである▼とはいえ東郷も内閣の一員だった。一番泣いたのは、指導者の「型の小き」を知らず、ひたぶるな思いで戦った国民と、戦場にされたアジアの国に尽きよう。70年前のきょう、日本は対米開戦にわいた▼だが緒戦の戦果の一方、日本は「戦争をどう終わらせるか」の確かな見通しを欠いていた。そして米国の物量に対し、人の命を湯水のように注ぎ込む戦いに突き進んでいく。その果ての破滅はご承知の通りだ▼いま東郷の遺著をひもといて、歌に古さを感じないのは、政権交代後の政治のせいだろう。輝いて見えた「大物」たちは早々とメッキがはげた。閣僚級もしかり。国難の年だけに閉塞(へいそく)感は深く、どこか往時に重なっていく▼歴史は時代の装いをして繰り返すという。TPP参加をめぐる「バスに乗り遅れるな」は三国同盟の時にも言われたそうだ。戦争という荒事ではないが、世界は変わり目。未来のために過去に学ぶ姿勢が、とりわけ政治家にほしい。

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