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企業の経営にかかわる人たちは、ぜひこの報告書に目を通してもらいたい。ひるがえって、わが社はどうか、自分の振る舞いに省みるところはないかに、思いを致す。まさに生きた教材となるのではないか。[記事全文]
国家公務員の給与を平均7.8%引き下げる法案で、与野党が歩み寄れない。臨時国会での成立が危うくなっている。角突き合わせるばかりの政治に、強い憤りを覚える。[記事全文]
企業の経営にかかわる人たちは、ぜひこの報告書に目を通してもらいたい。ひるがえって、わが社はどうか、自分の振る舞いに省みるところはないかに、思いを致す。まさに生きた教材となるのではないか。
オリンパス損失隠し事件で、同社が調査を依頼した第三者委員会が報告書をまとめた。
巨額の損失をなぜ長期間隠し通せたのか。おかしいと声をあげる人はいなかったのか。
報告書はそうした疑問にかなりの部分までこたえ、再発防止策を提言した。外部の専門家に検証を頼む動きは広がりつつあるが、第三者機関とは名ばかりで中身の薄い報告書も散見される。会社の奥深くにまで切り込んだ内容を評価したい。
オリンパスも見た目には企業統治の立派な仕組みをもっていた。だが、日本企業全体の信用をゆるがす事態を招いた。
報告書は指摘する。
同社は経営トップが不正を行うことを想定しておらず、それを防ぐ意識も体制もなかった。取締役の多くは財務の知識がなく、担当業務以外には無関心で、経営全体に目を光らせるという本来の義務を認識していなかった。監査役も社長の指名で決まり、専門性と独立性に欠けていた。異論をはばかる空気があり、不正を知った社員が通報する窓口も、役員の意向で社内にしか設けられなかった――。
監査法人が財務処理のおかしさに気づいた09年3月期は、急きょ「外部委員会」を設けて会社の意に沿う報告書を作らせて追及をかわし、直後にその監査法人を解任した。当時の詳しい経過も報告されている。
「うちとは無縁の話だ」と言い切れる企業は、いったいどれだけあるだろうか。
示された再発防止策は、役員の意識改革や情報開示など、報告書が認めるように「あまりにも当たり前の事項」ばかりだ。その当たり前を行うことが実は容易でないことを、多くの企業不祥事が物語っている。
おりから政府の法制審議会では、信頼確保を目的に会社法の見直し作業が進む。取締役のうち最低1人は社外から起用することの義務づけや、監査役の機能強化が検討されている。
だが、いくら制度を整えても実際に会社を動かすのは人だ。その「人」を育て、「不正は必ず起きる」という問題意識を常にもって臨まなければ、本当の企業統治は成り立たない。
報告書は、その事実をあらためて私たちに突きつけた。事件を、すべての企業人が足元を見つめ直す契機にしたい。
国家公務員の給与を平均7.8%引き下げる法案で、与野党が歩み寄れない。臨時国会での成立が危うくなっている。
角突き合わせるばかりの政治に、強い憤りを覚える。
政府は法案で、公務員の人件費を2割削るという民主党の公約を前進させるとともに、引き下げで生み出す約6千億円を震災復興にあてるはずだった。
このままでは、国民に復興増税を求めながら、官が身を削らず、復興財源に穴を開けることになる。さらに民間企業の動向にあわせた人事院勧告の0.23%引き下げも実現しない。
まさに、国会の無作為を象徴するような展開である。
政府の法案も、自民・公明の対案も、平均7.8%引き下げる数値は同じだ。
違いは、政府が人事院勧告を事実上棚上げして7.8%カットするのに対し、自公は勧告をいったん実施する点だ。
どちらも、勧告より大きく削る。退職金などに違いが出るとはいえ、越えられない溝だとはとうてい思えない。
対立が解けないのは、公務員の労働基本権に対する考え方の違いがあるからだ。
政府・民主党は、人事院勧告に沿って給与を決める現行方式をやめ、労使交渉で決めるようにしたい。そのため、基本権のうち労働協約締結権を回復する法案を国会に出している。人事院は廃止する。
これに対し、自民党には労組の立場が強まる基本権回復を嫌う声が強く、勧告の実施にこだわっているようである。
だが、歩み寄れるはずだ。なぜなら、基本権の問題は給与引き下げ法案ではなく、基本権回復法案で決めるからだ。まず引き下げたうえで、回復法案を来年の通常国会で審議すればいいではないか。
参院で多数を握り、法案の成否を事実上決められる野党が審議を拒む理由はないだろう。
政府も給与引き下げの先行をためらっている時ではない。支持母体の連合との間で、基本権回復を前提に、大幅引き下げで合意した経緯があるとはいえ、ぐずぐずしていると、復興にあてる財源が日一日と減る。
野田首相は、社会保障と税制の一体改革の素案を「年内をめど」につくる。そこで消費増税を掲げる段取りだ。
その前に官の身を削る給与引き下げ法案を成立させるか、実現のめどをつけなければ、消費増税への国民の抵抗感をいっそう強めてしまう。
与野党とも冷静になって、一刻も早く合意すべきだ。