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短日にして多忙。慌ただしさの極まる師走が、1872(明治5)年はたった2日で終わった。旧暦が新暦に改められ、12月3日が明治6年の1月1日になった。前にも書いたが、急なお触れに人々はてんやわんやだったそうだ▼唐突な改暦にはわけがあった。大隈重信の明かすところでは、新政府の財政は火の車だった。だが明治6年には閏月(うるうづき)があり、官吏の月給を13回払うことになる。太陽暦なら12回ですむと気づき、慌てて変えたのだという▼2日だけだった12月分も切り捨てたそうだから、都合2カ月分を節約した。巧みな歳出カットと言うべきか。いささか乱暴だが、知恵は出るものだ▼ひるがえって今の国会である。復興財源にあてるため国家公務員給与を減らす法案の成立が、どうも難しいらしい。いまの時代に鶴の一声とはいかない。それにしても、国会議員の定数や歳費も含めて、「身を削る決意」が伝わってこない▼震災後、月50万円減らしていた国会議員の歳費は、半年で元に戻った。明後日のボーナス291万円は去年より9万円多い。先の小紙世論調査で消費増税に反対した4割強は、まず身を切れという民意とも取れよう。首相自ら語った「春風(しゅんぷう)を以(もっ)て人に接し、秋霜(しゅうそう)を以て自ら粛(つつし)む」を、よもや忘れてはいませんね、と▼そういえば「血税」の語源も明治5年にさかのぼる。もとは税でなく兵役義務をそう称した。時をへて意味は変わっても重荷は変わらない。永田町が春風に座していては、賛意は遠い。