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天声人語

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2011年12月6日(火)付

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 夏ごろの小欄でメジロについて書いたら、ご自分で撮った写真などたくさんの便りをいただいた。萌黄(もえぎ)色に装うこの鳥、ファンはかなり多いようだ。歌人の故竹山広さんもその一人だったか、頬のゆるむ一首がある▼〈木犀(もくせい)の枝に目白の来はじめて雀(すずめ)は来ても来なくてもよし〉。メジロに比べてスズメが不遇だが、何せありふれた鳥である。「雀の涙」や「着たきり雀」「雀の千声(せんこえ)鶴の一声」などと軽く見られるのも、いわば大衆性ゆえだろう。しかし、そうも言っていられなくなった▼ずいぶん数が減ったと、昨今指摘されてきた。立教大と岩手医科大のグループが推計して、先ごろ「約20年で6割減少」という数字をまとめた。山階鳥類研究所の標識調査をもとにしていて、スズメの受難が裏付けられた格好だ▼別の異変も気にかかる。スズメは人里にすみながら、警戒心が強く気を許さない。なのに人慣れして、手から餌を食べたり、ねだったりする群れが全国で見つかっている。調べた学者は首をひねる。何かがこの鳥に起きているらしい▼スズメと同じく童謡に歌われ、同じく「学校」で学ぶメダカを思う。どこの水辺にもいたのに、開発や農薬で絶滅危惧の赤ランプがともる。みんなでお遊戯しているよ――の眺めは、悲しいかな遠くなった▼この季節、寒気を防ぐために羽毛を膨らませる姿を「ふくら雀」と呼ぶ。斑(ふ)入りのオーバーを着て丸くなる、小さきものの愛らしさ。どこにでもいる気安さを、失わせたくはない。