HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Mon, 05 Dec 2011 00:21:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:大阪の教育条例 時代に沿う人材養成を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

大阪の教育条例 時代に沿う人材養成を

 大阪の学校教育の行方が気掛かりだ。府市政を握った「大阪維新の会」の教育基本条例案では市場競争を勝ち抜く人材の養成ばかりが強調される。もっと時代の要請にかなう人材を育てるべきだ。

 大阪でのダブル首長選に勝った大阪維新の会は、府議会と市議会で同様の教育基本条例を成立させるつもりだ。知事から市長へ転身する橋下徹代表は、それが「民意の反映だ」と唱えている。

 政治主導による教育行政の改革が狙いだが、その基本理念には時代錯誤を覚える。

 「グローバル化が進む中、(中略)激化する国際競争に迅速的確に対応できる、世界標準で競争力の高い人材を育てること」

 この文言が子どもの人格形成にかかわる項目と同列に並んでいる。しかし、現実の世の中はとうにもっと先まで進んでいる。

 激しい市場競争は国内外で大きな経済格差を生んだ。拝金的風潮は社会のモラルハザード(倫理観の欠如)を招き、人心の荒廃をもたらした。高齢者や障害者、女性、子どもという弱い立場の人にばかりしわ寄せが行く。

 世界中の国家や社会はこうした問題を前に立ち往生し、今やその役割が根本から問い直されている。それに応えられる人材をどう育てるのか。そこにこそ、これからの教育の使命があると考える。

 グローバル化の荒波にのまれて切り捨てられてきたものに、その構想力を培う源泉はないか。

 自然や文学、芸術などの幅広い教養や、家族や地域を大切にする暮らし、思いやりや支え合い。子どもが秘めている多様な能力を見つけ、伸ばすという視点が今ほど必要とされる時代はない。

 条例案は逆行している。現場を競争原理に委ね、優勝劣敗のルールを貫く。首長が学校の目標を定め、教育委員会と校長が実現を目指す。失敗すれば退場だ。親身になって勉強の苦手な子を教え、悩みのある子の相談に乗る先生がいなければ学校は成り立つまい。

 とはいえ、この条例案は教育委員会の仕組みへの警鐘でもある。戦前の軍国主義的な教育の反省に立ち、首長から独立して民主的な教育を担う建前だが、形骸化が指摘されて久しい。

 子どものいじめ自殺や学力格差、先生の力量不足などの問題にも向き合う気概が伝わらない。

 条例案に反対する大阪府の教育委員らは、世の中を立て直す才能を育てるための対案を示してはどうか。大いなる論争を期待する。

 

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