東京モーターショーが三日、公開される。今年のショーはいつもと違う。東日本大震災の影響を経て、単なる環境対応を超え、自動車自体が別の何かに大きく変わる、その序章を見せているようだ。
リーマン・ショックの影響で、二年前の前回は不参加だった欧州勢が復帰して、会場に華やかさが戻ってきた。
その欧州勢も含めて、もはや低燃費の“エコカー”であることは当たり前。メーカー各社は、その性能をいかに伸ばすか、どんな付加価値があるかを競い合い、自動車という“生活道具”の根本的な変化の予感が漂っている。
国内メーカーの展示には、東日本大震災の影響も色濃くにじむ。
前回はその年に量産が始まった電気自動車(EV)に順風が吹いていた。日産や三菱が、ポスト・ハイブリッド車(HV)の柱と位置付けた。ところが震災で市場がしぼみ、航続距離の問題などから伸び悩む。
HVで先行するトヨタ自動車は先月末、家庭用電源で充電できるプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の受注を開始した。排ガスの代わりに水しか出さない燃料電池車(FCV)に、つないでいく戦略だ。電池切れに対する不安が、ガソリンでカバーが可能なPHVへの追い風になっている。
自動車はその百年余の歴史の中で、常に世相を映してきた。その車が今、大転換期を迎えている。
福島第一原発の事故は、国のエネルギー政策の未来を厳しく問うている。その方向性は車の将来を左右する。会場で説明に当たるトヨタの沢良宏・グローバルデザイン統括部長は「動力源を何にするかは、お客さまと地域と環境が決める」と話す。
車自体が単なる移動手段ではなく、蓄電池として地域のエネルギー供給体制の中に組み込まれていく時代である。
各社ともハウスメーカーと連携し、太陽光で発電した電力を自動車のバッテリーに蓄電し、節電や災害時に役立てる、車と住宅が一体化した未来図を、モーターショーで描いてみせる。
折り畳んで携帯式の電池としても使えるバイクを披露したホンダも含め、各メーカーともエネルギー問題を念頭に、人と車の新しいかかわり方を本格的に考え始めているのが分かる。ことしのショーには、エネルギーを賢く使うライフスタイルへの提案もちりばめられているようだ。
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