HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 04 Dec 2011 01:21:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:作家の帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんは今年、軍医と戦争を…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 作家の帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんは今年、軍医と戦争をテーマにした二冊の短編集を発表した。『蠅の帝国』と『蛍の航跡』。副題は「軍医たちの黙示録」だ▼三十人の軍医が医事専門誌などに書き残した資料から、精神科医でもある帚木さんが再構成した。「私の作りごとはない」と語る通り、一人称の語り口はノンフィクションの感触がする▼戦時中、軍医補充制度により、医師になったばかりの者は、半ば強制的に軍医に志願させられていた。大学教員や開業医も例外ではなく、戦地に赴いた▼インパール作戦で軍司令官に「抗命」し無断撤退した師団長を精神鑑定した軍医、シベリアで亡くなった約二千三百人の将兵の名簿を命がけで持ち帰った軍医、インドネシアで戦犯に問われ終身刑を告げられた軍医…▼あとがきに「私的な体験や局地戦を書くだけでは、戦争の全容は見えてこない」とあるように、戦地で地獄を見た三十人の軍医の視線が、それぞれの角度から戦争の実相を浮かび上がらせる。あらためて気付かされるのは、中国大陸の奥地から東南アジア、遠い太平洋の島々にまで、かくも大量の兵が送られていたという現実である▼今月八日で太平洋戦争が開戦してから七十年になる。国家同士の戦争という大きな物語は、兵士やその家族の無数の小さい物語が踏みにじられた上に書かれている。それを思い知らされた。

 

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