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天声人語

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2011年12月4日(日)付

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 清楚(せいそ)にして繊細、されど芯は強い。そんな日本女性の美称が大和撫子(なでしこ)だが、現実が違ってきたのか、男目線が嫌われてか、めったに聞かれない。代わって時の言葉に躍り出たのが、上下を逆にした撫子日本だ▼今年の流行語大賞が、女子サッカー代表の愛称「なでしこジャパン」に決まった。けなげにして豪快な活躍は賞に刻むに値する。「日本中に希望と勇気を与えた」と授賞理由にある通り、なでしこの価値は未曽有の災害と表裏の関係にある▼大賞を含む10傑の半分を、震災に関わる言葉が占めた。「3・11」「絆」「帰宅難民」「風評被害」、そしてACジャパンの広告「こだまでしょうか」。流行というより、使わざるを得なかった語句も多い▼言葉からたどっても、震災の年だった。ほかにも「がんばろう日本」「想定外」「除染」ときりがない。365日の70日目、年の序盤を襲った災いが、ただの卯年(うどし)を非常の色に染めた▼「今年の××」の発表がにぎやかだ。あるものは震災を意識し、あるものは何事もなかったように。ともあれ被災地にとって、それはまだ回顧の対象ではなく、日常である。仮設の住民は寒さと苦闘し、福島ではコメの出荷自粛が広がる▼絆、きずな。はやりものに終わらせたくない語だ。すべてをなくして、なお残る人の縁。大和撫子と同じく普段使いからは遠かったが、国民の心をつなぐ大役を担う。3・11で再生した言葉は、仮名で3字、漢字が11画。取るに足らない偶然が、今は愛(いと)おしい。

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