米航空大手のアメリカン航空と親会社AMRの経営が破綻した。燃料費高騰に加え格安航空会社(LCC)台頭で業績が悪化した。再建中の日本航空(JAL)への影響を最小限にとどめたい。
激しい競争の中で生き延びてきたアメリカン航空だが、燃料費や人件費の高騰とLCCとの競争に勝ち抜けなかった。約二兆三千億円(邦貨換算)という負債総額は提携関係にある日本航空とほぼ同額だ。
今回の連邦破産法一一条の適用申請は今後、不採算路線の整理や人員削減などを通じて同社の再建を図ることが目的である。
米国内ではすでにユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスとデルタ航空が、破綻後に合理化や合併を行って再生した。アメリカン航空も合併・提携を模索する可能性が高い。
今回の倒産は、世界の航空業界でLCCが主役の時代になったことを印象づける。顧客へのフルサービスを行う大手に対して、LCCは座席間隔を詰めて多数の利用客を乗せ人件費や販売コストを削って低料金を実現する。
LCCの強さは従来の半額とか三分の一以下という安さにある。課題は安全運航だが、同一機種にそろえたり新型機を導入して国際水準を保つ工夫をしている。
アメリカン航空の倒産は、日本航空はじめ国内業界に影響を与えることは避けられない。
昨年一月に倒産した日航の二〇一一年九月中間連結決算は営業利益が千六十一億円と、更生計画で示した一二年三月期の七百五十七億円を上回った。通期では千四百億円と、前期千八百億円に続く大幅な利益となる見込みだ。
もっとも現在の好業績は支援機構の出資はじめ税制・金融など手厚い公的支援でもたらされた仮の姿である。アメリカン航空が太平洋路線などを縮小したら、再建にも支障がでる。影響を最小限にとどめる対策が必要だ。
ライバルの全日本空輸(ANA)も安閑としてはいられない。同社も高コスト構造が指摘されており、さらなる合理化が不可欠だ。世界で初めて営業飛行を始めた新型機ボーイング787をどう活用するかが、課題だろう。
国内市場では来春からLCCの本格参入が始まる。もはや親方日の丸経営とか代理店頼みの殿様商法、主要路線や空港での既得権益への安住などは許されない。新しい経営手法を確立すべき時期に来たと、覚悟を固めてほしい。
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