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太陽光など再生可能エネルギーを大きく増やす電力買い取り制度が来年7月に始まる。その要となる「調達価格等算定委員会」の人事案に、環境団体や自然エネルギー推進派の議員から疑問の声があがっている。[記事全文]
日米欧の主要中央銀行が、協調して金融危機への対応策を打ち出した。欧州の債務問題で経営が悪くなった銀行が資金繰りに窮しないよう、中央銀行が貸し出すドル資金の金利を下げ、借りやすくする。[記事全文]
太陽光など再生可能エネルギーを大きく増やす電力買い取り制度が来年7月に始まる。その要となる「調達価格等算定委員会」の人事案に、環境団体や自然エネルギー推進派の議員から疑問の声があがっている。
提示された委員候補5人のうち3人が、法案の成立や制度のあり方に否定的だったり、消極的だったりした人物で占められている、との指摘だ。
この委員会は、電力会社が再生可能エネルギー電力を買い取る際の固定価格を審議する。経済産業相が、その意見を尊重して価格を決める仕組みだ。
価格を高くすれば自然エネルギーへの投資を促す。半面、電気料金に上乗せされるため、家庭や企業の負担は増える。
委員会の設置は政府提出の法案にはなく、民主、自民、公明3党による修正協議で決まった。中立的で透明な手続きで価格を決める必要があるとの判断からだ。国会同意が必要な委員の人選についても「3党が誠意をもって対応する」との政調会長合意が交わされている。
このため、委員人事は表向きは経産相が国会にはかった形だが、3党から前もって推薦してもらったという。民主党が野党時代に日銀総裁案などに反対を続け、国会が紛糾したような事態を避けたいという思惑があったことは想像に難くない。
人事案でとりわけ問題視されているのが、新日鉄の進藤孝生副社長だ。
買い取り価格が過大にならないよう、需要側の意見を反映することは大切だ。しかし、進藤氏は国会に参考人として呼ばれた際、「電力多消費産業」と自らの立場を述べ、負担が重くなる法案成立に難色を示した。
その後、電力を大量に使う事業所は電気料金への上乗せ分が8割免除されることになったものの、「制度反対」の先頭に立っていた業界代表だ。
委員会を推進派で固めろとは言わないが、立法の趣旨とは異なる人選ではないか。進藤氏は委員長含みとされているので、なおさらだ。
震災後、買い取り制度の重要性は大きく増した。原発依存度を下げるうえで自然エネルギーの普及は喫緊の課題だ。震災前の法案を、そうした変化を踏まえて充実した中身に仕上げたのが与野党協議だった。それだけに、この人事案は残念だ。
自然エネルギーの新規参入や業務拡大を促すためにも、委員会人事で停滞している余裕はない。経産相は人事案を取り下げて、あらためて3党と協議してはどうか。
日米欧の主要中央銀行が、協調して金融危機への対応策を打ち出した。欧州の債務問題で経営が悪くなった銀行が資金繰りに窮しないよう、中央銀行が貸し出すドル資金の金利を下げ、借りやすくする。
各国の株式市場は、金融システム危機への懸念が和らいだとして、いずれも上昇した。
ただ、今回のドル供給策はあくまで急場しのぎでしかない。イタリアへ波及した欧州の債務危機は、フランス国債の格下げ不安やドイツ国債の入札不調で一段と深刻化している。
国債の値下がりで欧州の銀行は財務内容が悪化しており、貸し渋りや資産売却による信用収縮の圧力は収まりそうにない。
経済協力開発機構(OECD)はユーロ圏が10〜12月期から2四半期連続でマイナス成長になると予測する。債務問題が金融機能を損なわせ、実体経済を冷え込ませる構図だ。
このままでは、欧州に多額の投融資をしている米国や、欧州への輸出が多い中国、円高の直撃を受ける日本など、世界に経済危機が広がる。リーマン・ショックの再来は断じて防がねばならない。
ところが、肝心のユーロ圏主要国の足並みは乱れたままだ。当面の切り札である欧州金融安定化基金(EFSF)の拡大についても、各国の財政規律を重視するドイツの反対で、目標の1兆ユーロはおぼつかない。
財政健全化も重要だが、まずは欧州中央銀行(ECB)が国債の購入を拡大すべきだ。金利も大幅に引き下げ、大胆な金融緩和に踏み込む必要がある。インフレを招くとして国債購入に反対しているドイツは、ここから「君子豹変(ひょうへん)」してほしい。
信用収縮は早晩、巨大なデフレ圧力となる。金融システムの動揺を抑えないと、手の施しようがないデフレ・スパイラルに陥りかねない。
ユーロ圏の物価上昇率は現在3%。ECBが目安とする「2%以下」を上回り、通常なら引き締めの情勢だ。しかし、いまは非常事態である。第1次大戦後のハイパーインフレが骨身に染みているドイツだが、デフレ・スパイラルを招いては元も子もない。
さらに、フランスが提案していたように、EFSFは銀行へと改組するのが望ましい。ふつうの銀行と同様に、手持ちの国債を担保にECBから資金を借りて国債を買えば、EFSFの規模を拡大せずにすむ。
これもドイツの反対でつぶれたが、危機の防止を最優先にしなければならない。