HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 01 Dec 2011 03:21:06 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:少女殺害・再審 冤罪はまだありそうだ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

少女殺害・再審 冤罪はまだありそうだ

 「開かずの扉」とも言われる再審の門が開いた。元受刑者の男性は、一貫して無実を訴えてきた。検察は不利な証拠を長く出さなかった。裁判員時代になお、前近代的な痕跡が司法に残っている。

 「裁判は八百長だと思っている。正義はなく、あきれている」。薄い青色のセーターを着た前川彰司さんは再審開始の決定を聞き、記者会見で捜査機関への怒りをぶつけた。

 刑に服して満期出所した後、七年前に再審を申し立てた。「自分はやっていない。必ず、冤罪(えんざい)は晴れると確信しています」と語っていた。前川さんにとっては、何よりも待ち望んでいた日であろう。

 名古屋高裁金沢支部の決定は「複数の知人供述は信用性に疑問を抱かせるに十分」と、明快に述べた。有罪の最も大きな根拠とされた証言について、あいまいな点や相反する部分を丁寧に検証した結論といえる。逆にいえば、有罪判決は何をどう見ていたのか。疑問は残る。

 今回の判断を支えたのは、裁判所の勧告を受けて検察側が提出した約百点の新証拠だった。供述の変遷を示す調書は、「捜査機関の誘導があった」とする弁護側の主張を裏付けた。

 裁判所は物証面でも「凶器とされた二本の包丁ではつかない傷がある」と判断した。検察提出の新証拠の中に、被害者の解剖写真などがあったことが大きい。

 検察は被告に有利な証拠を隠していたと批判されても仕方がないし、凶器との不一致が一目で分かるのだったら、むしろ悪質だ。

 一九七五年に最高裁は、再審についても「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則が適用されるという「白鳥決定」を示した。それ以降、財田川、免田、松山、島田などの死刑確定事件が再審無罪となった。

 近年は、二〇一〇年の足利事件や今年五月の布川事件などで再審無罪が出ている。裁判員制度で捜査機関が持つ証拠の開示は進む方向にある。

 冤罪の根絶には、証拠の全面開示に向かうほかはない。名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚のように、無実の叫びを続けている人はまだまだ多い。

 被害者の母親は「事件がなければどんな人生を送っていたかという思いが募る」と手記で語った。その無念さは鋭く胸をしめつける。まして、真犯人が捕まっていないのであれば、なおさらだ。

 

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