HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 01 Dec 2011 02:22:46 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:かつて、映画賞を総なめした作品のテロップにこんな言葉が映し…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

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 かつて、映画賞を総なめした作品のテロップにこんな言葉が映し出される。<10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜(むこ)(無実の者)を罰するなかれ>▼痴漢冤罪(えんざい)事件をテーマにした周防正行監督の『それでもボクはやってない』の冒頭だ。長い裁判の歴史の中から紡ぎ出されたはずの法格言は、刑事裁判の現実の前にかすんでいる▼一九八六年に起きた福井市の女子中学生殺害事件で、名古屋高裁金沢支部はきのう、懲役七年の実刑が確定し、満期出所した前川彰司さんの再審開始を決定した。裁判所の勧告を受けて、検察側が初めて開示した目撃者の供述調書や遺体の写真などが重要な判断材料になった▼「失った時間は返ってきませんよ」と語る前川さんの表情は硬かった。有罪とする調書と矛盾するこれらの証拠が早い段階から開示されていれば、こんなに長く苦しめることはなかったかもしれない▼裁判員制度の導入を機に、被告に有利な証拠が開示されるケースも出てきた。再審を求めている過去の事件でも、一部に限られてはいるものの、新たな証拠が開示され始めている。それでも、不利な証拠は隠したいという習性を改められないのが、検察という組織だ▼冤罪は被告やその家族を苦しめるだけではない。真犯人を野放しにし、遺族に苛烈な苦しみを与える。<無辜を罰しない>。理想を絵空事にしたくない。

 

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