大阪でのダブル選挙に勝利した橋下徹前府知事率いる「大阪維新の会」。今年四月の統一地方選後も続く地域政党の好調さを見せつけた。底流にあるのは既成政党に対する有権者の根強い不信感だ。
圧勝と言っていい。「大阪都構想」を実現するために知事職をなげうって市長選に挑んだ橋下氏が思い描いた通りの結果だった。
地方選と国政とは直接関係ないとはいえ、二大政党の民主、自民両党が党本部レベルでは「不戦敗」を決め込み、地方組織に選挙戦を委ねた結果、惨敗したことの意味は大きい。
二〇〇九年の衆院選。民主党への政権交代は、国民のための政治を実現したいという有権者の思いが結実した結果だったが、それはあっさりと裏切られる。
特に東日本大震災以降、国民の眼前で繰り広げられたのは菅直人前首相の震災・原発対応の不手際と、脱原発を口実にした政権延命策。そして与党内の混乱と、国会での不毛な与野党対立だ。
首相が交代したかと思ったら、いつの間にか、消費税率引き上げが既定路線のように語られる。与党も野党も、政府を正すという本来の役目を果たし切れていない。
国民の命と暮らしを守るための政治が、逆に命と暮らしを危うくしている現実に、国会で除染の遅れを叱った児玉龍彦東大教授でなくとも「一体何をやっているのですか」と怒りたくもなる。
行き場を失った既成政党支持層や無党派層が維新の会に流れたのは、出口調査で明らかだ。
民主、自民両党が党本部レベルで不戦敗としたのは、次期衆院選をにらんで橋下氏との対立を決定的にしたくなかったからだろう。それは保身のための浅慮である。
政党は政策実現のための政治集団だ。もし目指す方向とは違う動きが出てくれば止めるのが本来の役割だ。それを放棄することが、既成政党不信をより深くしていることになぜ気付かないのか。
橋下氏は市職員給与の見直しや各種団体の補助金削減など市政の抜本改革に乗り出す。その政治手法には独裁的との批判もあるが、役人の壁に敢然と立ち向かう姿勢に有権者の期待は大きい。
それは地方政治だけでなく国政でも同様だろう。今回の選挙に限らず既成政党は、国民には既得権益の擁護者に映る。その根本を変えない限り、新党をつくったり政界を再編したりしても、国民のための政治を実現するのは難しい。
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