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天声人語

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2011年11月30日(水)付

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 天気図の曲線が美しくなると冬は近い。街に野に走りの木枯らしが吹き、指の先のかすかな冷えに、ふと「幸せ」の意味を問うてみたりする11月の言葉から▼長崎県諫早市の72歳の高校生久保ツネ子さんが大学に合格し、社会福祉学科に進む。若いとき貧しくて高校に行けなかった。その作文に、「新しいことはなかなか憶(おぼ)えられません……でもいいのです。先生方が教えてくださることを、一生懸命自分の頭でかみしめながら聞いている、それだけでうれしいのですから」▼津波で大黒柱を亡くした福島県相馬市の一家5人が、家族写真に納まった。「夫がいなくなって寂しい。でも出来上がった写真を見ながら『こういう時があったよね』と言えるようになりたい」と阿部美香さん(41)。娘2人と祖父母との新たな歩みだ▼震災後、宮城県気仙沼のかつての共演者を支援してきた欽ちゃんこと萩本欽一さん。「よく知っている一人を幸せにして、次の人へとつながるのがいい」▼都道府県の「幸福度」で福井が1位とされた。名刹(めいさつ)永平寺の西田正法布教部長は「福井のように雪深いなど自然の厳しいところでは、『何も起きなかったらありがたい』と考える。それが幸せにつながるのでは」▼初めての恋愛小説を書いた作家の川上未映子さんが言う。「幸せの形は決まったものではない。昔を振り返った時にあったなと眺められるような、今この瞬間はあるなと思えるような、点のようなきらめきでもいいのでは」。冬の星座を仰ぐ。

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