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天声人語

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2011年11月29日(火)付

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 蚊雷(ぶんらい)、とは蚊の発する羽音のこと。かぼそい声を「蚊の鳴くような」と例えるが、蚊柱が立つほどの群れだと「雷」になるのだろう。憎(に)っくき蚊をののしるユーモラスな一文が子規にある▼「汝の一身は総(すべ)てこれ罪なり、人の血を吸ふは殺生罪なり、蚊帳の穴をくぐるは偸盗(ちゅうとう)罪なり、耳のほとりにむらがりて、雷声をなすは妄語罪なり……」。いや、笑ってはいられない。マラリアを媒介するもっと罪深い蚊が、温暖化で生息域を広げていると、先の小紙が伝えていた▼場所はケニア。「高地」と呼ばれ冷涼だった地域で患者が多発している。住民は蚊の飛ぶ音も知らなかったのに、ここ25年で最高気温が2.5度以上高くなったためらしい。年に何十万人もがマラリアで死ぬアフリカで、感染地域の拡大は脅威そのものだ▼その一角の南アフリカで、温暖化防止の国際会議COP17が始まった。この問題、震災後は影が薄かったが消えたわけではない。この間にも極地の氷は解け、タイの洪水など各地を異常気象が襲っている。じわじわと世界が傷んでいる▼だがここ数年、米中はじめ各国のエゴがぶつかり方途が定まらない。減らすどころか、去年の世界の二酸化炭素(CO2)排出は大幅増で過去最高になった。英知を絞るときなのに、蚊を喜ばせてどうする▼原子の火が生む放射能と違い、原始の火のCO2は太古からある。だが、いまや脅威としては同じ。神話で人類に火を授けたプロメテウスに後悔させては、申し訳がない。

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